読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

子どもたちは夜と遊ぶ(上)(下) 辻村深月著 講談社ノベルス 2005年

 ネタばれあります、すみません;

 D大学に通う工学部修士課程二年・木村浅葱には「雰囲気」がある。天才肌のこの青年は幼い頃、母親の虐待にあっていた。彼をいつも庇ってくれたのは双子の兄・藍。弟を守ろうとする余り、藍は母親を殺してしまう。二人は別々の施設で育てられ、そこで浅葱は性的虐待を受ける。そのため肉体的接触を極端に嫌うようになった浅葱。全てをリセットしようと、大学三年生の時、交換留学生を選ぶ論文コンクールに応募。だが、優秀賞を『i』に取られる。
 浅葱が望んでいた海外留学を奪った上、名乗り出もしない『i』とは誰か。ネット上でようやく見つけた『i』は、自分を生き別れの兄・藍だと名乗る。直接会いたい、と切望する浅葱に、『i』はゲームを仕掛ける。一人四人ずつ、出し合うヒントに該当する人物を殺したら、浅葱と会おう、と。
 高校生の赤川翼が行方不明になり、血の付いた眼鏡が発見された。童謡をメインに据えた見立て殺人、初めはゲームを楽しむ風だった浅葱も、身近な人物をわざと狙っているのではないか、と言うヒントが増えてくるにつれ苦しみ始める。水商売の女・森本夏美、その現場から立ち去る所を見られてしまった先輩・萩野清花を殺す浅葱。一方、養護施設で藍に暴力をふるった今田信明が死後熱湯をかけられた姿で発見され、妊婦だった蛇島友美が自動車事故で死んだ。『i』は面白がるように、ネット上に浅葱と自分とのやり取りを公開する。
 どう考えても友人・狐塚孝太を示しているヒントをわざと曲解し、仄かに想いを寄せる教育学部の後輩・月子の友人片岡紫乃を殺す浅葱。わがままで否定的な考えをする紫乃に振り回されているかに見えた月子は激しく悲しみ、やがて真相に気付き始める。
 『i』側の四人目として、浅葱に再び肉体関係を要求していた養護施設での幼馴染み・川崎幸利が殺された。浅葱を呼び出した月子は『i』はどう考えても藍だとは思えない、と訴える。月子の想いは浅葱には絶望に映り、思わず月子に花瓶を振り下ろしてしまう。
 瀕死の状態で、それでも浅葱を庇う月子。条件を果たしたと思った浅葱は藍に会いに行き、右目を失う。
 月子の恩師・児童心理学の秋山教授、かつてDVに悩み月子に力づけられた白根真紀、狐塚孝太のルームメイト石澤恭司。記憶を失った月子を、次々と友人達が見舞う。…

 …ええとですね。誤解を恐れず言ってしまうなら、講談社ノベルス読むような読者には、もうそもそもの最初から、「…これってまさか○○ネタじゃないよね??」って思うと思うんですよ。それじゃあまりにもありふれてるよ、どうかそうじゃありませんように、って念じながら読んでですね、やっぱりそうだったりしまして。…それが分かった時にはちょっと「…ふぅ」とか思ってしまいました(苦笑;)。いくら人付き合いを避けてた、って言ったって月子の苗字を知らない、ってのはどうだろう、とも思ったし。
 それでもですね、月子と浅葱のやりとりは切ない。胸に迫る。『ぼくのメジャースプーン』の秋先生が出てきたのも嬉しい。条件提示能力は、この作品でははっきりとは書かれてないんですね。
 推理小説としてのどんでん返しは最後に来ました。…これは気付かなかったなぁ。恭司、いい男だ。
 それにしても、この二人はどこまでもすれ違うんだね。…ふぅ。