読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

有頂天家族 森見登美彦著 幻冬舎 2007年

 京都を舞台にとある天狗と人間と狸の一家を描いた連作短編集。

第一章 納涼床の女神
 引退した天狗・如意ヶ嶽薬師坊こと赤玉先生のアパートに通う狸がいた。名前は下鴨矢三郎、洛中に名高い立派な狸・下鴨総一郎の三男である。4匹の兄弟ともども父の知己・天狗の元に通って教えを乞うていたが、天狗は自分が攫ってきた人間の女・弁天に恋をして、神通力を失ってしまう。今日も天狗は赤玉ポートワインを飲みながら、弁天に恋文を送っている。

第二章 母と雷神様
 「タカラヅカ」に罹患している母狸は、黒服の美青年に化けてビリヤードを楽しむ日々。小心で神経質な兄、ある日蛙に化けて以来井戸の底に引きこもりきりの次男、オモシロ主義の三男、不甲斐ない化けっぷりが広まっている四男をこよなく愛する母は、雷が鳴るとパニックに陥る。子供たちはその度、母の元に駆けつける。

第三章 大文字納涼船合戦
 父の遺志を継ぎ、五山送り火の日に空飛ぶ納涼船を飛ばそうとする長男・矢一郎。去年のどんちゃん騒ぎで焼けてしまった納涼船の代わりに、矢三郎は天狗の船を借りにアパートへ。ところが赤玉先生は、船は弁天にやってしまったと言う。何とか弁天に船と風神雷神の扇を借りたものの、やはり今年も父・総一郎の弟・夷川早雲一家がやってきて、船も扇も失くしてしまう。

第四章 金曜倶楽部
 弁天を恐れて京都と大阪を行ったり来たり、矢三郎は逃亡生活を送っている。結局弁天に見つかって「金曜倶楽部」に連れて行かれる矢三郎。すき焼きをご馳走になりつつかくし芸を披露、参加メンバーの一人・淀川教授に気に入られ、去年の忘年会に狸鍋になってしまった父の最期の姿を知る。

第五章 父の発つ日
 赤玉先生を連れて風呂屋に行くと、夷川早雲の息子たち・金閣銀閣が矢三郎を襲って来た。そんな攻撃に屈する矢三郎ではないが、金閣銀閣は「総一郎が人間に捕まったのは、次男・矢二郎と飲んでぐでんぐでんになったからだ」と捨て台詞を吐いて行く。長兄は嘆き、三男は確かめ、母は全てを判っていた。

第六章 夷川早雲の暗躍
  狸界の次なる頭領・偽右衛門を選ぶ日が迫っている。兄・矢一郎は偉大なる父の跡を継ごうと忙しい日々。銘酒・偽電気ブラン製造工場の頂点に君臨する叔父・夷川早雲も虎視眈々、妨害工作に勤しんでいる。いよいよ当日、金閣銀閣の妹・海星から父たちが何か企んでいるから気をつけろと忠告されたのも束の間、京都の空に雷鳴が鳴り響く。急ぎ母の元に駆け付けようとした兄弟たちは、それぞれ早雲一家に捕まってしまう。

第七章 有頂天家族
 長兄が金曜倶楽部に引き渡され狸鍋にされようとしている。偽電気ブラン工場の倉庫に閉じ込められた四男は、海星の力を借りて隠し扉を探し出し、井戸の底の次兄の元に急ぐ。弟に偽電気ブランをしこたま飲ませられた次兄は気分一新、偽叡電に化けて金閣銀閣を襲い、矢三郎を救い出す。そのまま金曜倶楽部に乗り込み長兄を逃がしたまではよかったものの、金曜倶楽部は河岸を変え、今度は母を狸鍋の材料にすると言い始める。
 天狗風が吹く中、矢三郎が走り、弁天が微笑み、金曜倶楽部の面々や狸の長老たちが転げまわる、恋に狂った赤玉先生が吠える。母を救えるのか、父はどうして人間などに捕まったのか、次の偽右衛門の行方は。…

 う~ん、可愛い(笑)。
 擬音がいいなぁ、くしゅぱかと卵を割り、じうじうと焼けたすき焼きを食べる。西原理恵子さんの漫画もこんな音使いですよね~。
 今度のヒロインは小悪魔タイプ。弁天に何でもかんでもやってしまう赤玉先生の台詞、「喜ぶ顔が見たいからだ!」には本気で吹き出しました。何て愚かで可愛いらしい! …他人事だから言えることだけど(笑)。
 これ読んだ人はまず間違いなく『平成狸合戦ぽんぽこ』を思い出すだろうな、と思いつつ。多摩の狸より京都の狸の方がより強かなんでしょうか。深刻な事態なのにどうしても呑気でユーモラスなのは共通ですね(笑)。