読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

まことの華姫 畠中恵著 角川書店 2016年

 連作短編集。

 

江戸は両国。暮れても提灯の明かりが灯る川沿いの茶屋は、夜も大賑わい。
通りの向こうの見世物小屋では、人形遣いの芸人、月草の名が最近売れてきている。
なんでも、木偶の姫様人形、お華を相方に、一人二役の話芸を繰り広げるのだという。
それも、話芸が目当てというより、お華に会いに来るお客が多いというのだ。
何故なら。“まことの華姫”は真実を語る――。

 

姉を殺したのは、実の父かもしれないと疑う、小屋一帯の地回りの娘・お夏。
七年前の大火事で幼な子を失い、諦めきれずに我が子を捜し続ける夫婦。
行方知れずとなった親友かつ義兄を捜しにはるばる西国からやってきた若旦那。
そして明らかになる語り部・月草の意外な過去……。
心のなかに、やむにやまれぬ思いを抱えた人々は、今日も真実を求めてお華の語りに耳を澄ます。
しかし、それは必ずしも耳に心地よく、人を幸せにするものばかりとは限らなくて……。
洒脱な人形語りで江戸の事件を解き明かし、市井に生きる人々の悲喜こもごもを描き出す、新たな畠中ワールド!!            (紹介文より)

  

 まことの華姫
盛り場の元締め 山越の親分の娘、13歳のお夏は思い悩んでいた。先日隅田川で溺死した姉・おそのは、父親に殺されたのではないかと。おそのには好いた相手がいたのに、父親は違う相手と添わせようとしていた、そのことを苦にして身投げしたのではないか、と。お夏は見世物小屋で評判になっている「まことの華姫」に真実を語ってもらおうと、両国へ乗り出す。「まことの華姫」とは、元は人形師の月草が、自作の姫様人形お華を片手に腹話術を披露する演目。お華はまことを見抜く目を持ち、誰も知らない真実を語ると噂されていた。

 十人いた
柳原の親分夫婦は七年前、火事から逃れようと乗った船が引っくり返って、同乗していた子供たちを亡くした。所が今頃になって、その子供たちが名乗り出て来た。しかも十人。誰が本当の子供なのか教えて欲しい、という依頼に、お華を操る月草は戸惑う。

 西国からの客
西国から来た青糸屋の若旦那・銀次郎は、お夏から「まことの華姫」の噂を聞いて興味を持つ。銀次郎には、どうしても探し出したい人物がいた。それは幼馴染で青糸屋の長男である武助。銀次郎は自分が武助の妹・お徳の入婿になったことで、武助を追い出したような形になったことをずっと気に病んでいた。

 夢買い
華姫の語ることは真実となる。噂を聞いた人々が、お華に自分の都合のいいことを語らせようと小屋に押し掛けるようになった。自分の娘を武家に嫁入りさせたい油屋のお紋、同じ相手との縁談を望んでいる御家人の菅井。揉めて小屋まで壊された月草は、お夏と共に元々の旗本・梅川家夫を訪ねるという暴挙に出る。

 昔から来た死
その日、見世物小屋に来た客は、月草の過去を知っていた。
かつて月草が西国にいたこと、腕のいい人形師だったこと、師匠の娘・お路と許婚だったこと。四年前の大火事で、ほのかに思いを寄せていた姉娘のお市とその許婚の兄弟子を喪い、自身もまた人形師として復帰できない大怪我を負ったこと。今、お路は実家が裕福な男と一緒になっていたが、その男は人形師としての腕は今一つで、しかも殺されてしまった。夫を四年前の火事の放火犯ではないかと疑っていたことから、お路が下手人として今にもしょっ引かれそうな状況、彼女を救うために真の下手人を見抜け、と月草に迫る。その客の正体も含め、お華は真相解明に奔走する。…

 表紙の絵も可愛らしい一冊。
 人形にまるでもう一つの人格があるかのような設定、これが小野不由美さんとかだったらもっと境界線の曖昧な、ホラーじみた展開になるんだろうな、と思いつつ。
 火事にまつわる話が多かったなぁ。お華の知っていることは月草の知っていることに限定されていて、ただお華の口を借りた方が言い易いってだけ、の筈なんですが、どうも矛盾があるような(苦笑;)。で、腹話術ってそんな、一朝一夕で修得できるものではないだろう、という気もしたし。
 いや、面白かったんですけどね、どうもお夏の無謀な行動が性に合わなくて; 狂言回し的な役割もあるから仕方ないんですが。