読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

わかれ縁 西條奈加著 文藝春秋 2020年

連作短編集。

「わかれ縁」
 夫婦となって5年、定職にもつかずに浮気と借金を繰り返す亭主富次郎に絶望した絵乃は、身ひとつで家を飛び出し、離縁の調停を得意とする公事宿「狸穴屋」に流れ着く。
 夫との離縁を望むも依頼できるだけの金を持たない彼女は、女将 桐の機転で狸穴屋の手代として働くことに。
 七回の離婚を繰り返した桐、番頭の舞蔵、絵乃の指南役 椋郎、桐の娘の奈津。個性豊かな狸穴屋の面々とともに一筋縄ではいかない依頼を解決しながら、果たして絵乃は念願の自身の離縁を果たすことができるのか!? 

「二三四の諍い」
 狸穴屋にやってきたのはまだ10代の兄妹、彼らの望みは両親を離縁させることだった。兄妹は、母方の借金を理由に父と兄が母を追い出そうとしていると言い、その上の兄は、母と弟妹の金遣いの荒さにうんざりしているという。さて、当の本人たちの言い分は。

「双方離縁」
 嫁と母の仲が悪い。婿から相談を受けたのは、絵乃の前に狸穴屋に勤めていたお志賀。武家に嫁いで、その旦那の友人からの離縁依頼だとか。あまりに悩んだ末の、婿の出した決断に、嫁姑双方が蒼褪める。

「錦蔦」
 夫は九代続く縫箔師の錦屋、妻の実家は十二代を数える截金師。離縁は成ったものの、才能ある息子を引き取りたいと、双方の実家が主張する。息子の意向は、と絵乃が尋ねてみると…。

思案橋
 絵乃のトラウマは、幼い頃父と自分を捨てていなくなってしまった母親。違う男の元に走ったらしい、との噂を聞いて、自分にもそんな浅はかな血が流れているのでは、と恐怖している。母親を見かけて動揺した矢先、富次郎が背中から刺されたとの連絡が入る。しかも富次郎は犯人として絵乃を名指ししていると。だが、番屋に出頭したのは絵乃の母だった。

「ふたたびの縁」
 母親は自分を庇っている。直観した絵乃は、夫を刺した真犯人を探して夫の浮気相手を当たっていく。また、母親が自分たちの元を去った理由も知り、そちらの離縁も成立させようと奮闘する。…
          (出版社HPの紹介文に付け足しました)

 西條さんの、職人シリーズみたいなのになるのかな。
 面白かったです。縁切寺は知ってましたけど、こんな職業も江戸時代にはあったのね~。「日本で最初に離婚した夫婦はイザナギイザナミ」なんて、そう言えばそうだわ、と吹き出しました。
 離縁の調停と言いながら、「離縁」実施は自身と母親だけなんだよなぁ。普通のケースも見たかったと思いつつ。ほぼほぼ幸せな結末、予定調和といえば予定調和なんですが、この安定感は心地いい。職人さんの絡む「錦蔦」なんて、いかにも西條さんの世界らしくて嬉しくなりましたよ。富次郎との決着のつけ方には多少驚きましたけど。
 ネタはまだありそうな感じ。楽しみです。