読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

サム・ホーソーンの事件簿Ⅰ エドワード・D・ホック著/木村二郎訳 創元推理文庫 2000年

 米国での出版は1996年。
 ニュー・イングランドの田舎町ノースモントで開業した青年医師、サム・ホーソーンが出会った事件の記録。
 初期の短編12編と「長い墜落」を収録。

 『有蓋橋の謎』:
 雪のやんだ朝、有蓋橋の中に入ったハンクが馬車ごと消えた。橋に入った轍の跡があるばかり。やがて町から十マイル離れた路上で、馬車に乗ったハンクの死体が見つかった。ハンクはいつ、どこで殺されたのか。
 『水車小屋の謎』:
 夏は製粉所、冬は氷室として使われる林の中の水車小屋に、一人の自然主義者ヘンリー・コードウェイナーが住み始めた。ノースモントの人ともすっかり仲良くなったが、別れの日、水車小屋が火事になる。焼け跡からは男の撲殺死体が見つかった。コードウェイナーが先に町に送った手提げ金庫の中身も消えている。彼を殺したのは誰か、彼が書いた日誌や手記はどこへ消えたのか。
 『ロブスター小屋の謎』:
 高名な脳外科医・ドリー医師の娘の婚約パーティに招待されたサム医師。余興で行われたマジシャン・シャベールのロブスター小屋からの脱出劇は、シャベールの死で終わった。観客の目の前で、シャベールはどうやってのどをかき切られたのか。
 『呪われた野外音楽堂の謎』:
 独立記念日、野外音楽堂でドウィギンズ町長が殺された。衆人環視の中、黒頭巾に黒マントを身に着けドウィギンズを刺し殺した男は、どうやって姿を消したのか。
 『乗務員車の謎』:
 汽車でバウヴィルへ向かうサム医師。夜行列車の乗務員車中で、車掌が殺された。貴重品として預かっていた宝石類も消えている。ドイツ人の彼が残した「elf」のダイイングメッセージの意味は。
 『赤い校舎の謎』:
 ベルモント一家の次男坊・十歳のトミーが誘拐された。小学校の教師ミセズ・ソーヤーは、放課後彼がぶらんこに乗って遊んでいたのを見た、と言う。彼はいつ、誰に攫われたのか。
 『そびえ立つ尖塔の謎』:
 冬、ノースモントのはずれにジプシーが暮らし始めた。昔気質の町の人々があまりいい顔をしない中、牧師のウィガーだけは彼らを教会のミサに招待する。クリスマスの朝、鐘楼でウィガーが殺された。一緒にいたジプシーのカランザは彼を殺していない、と言う。直前まで階下にいたウィガーを殺したのは誰か。
 『十六号独房の謎』:
 詐欺師で脱獄の天才ジョルジュ・レームが、ノースモントで捕まった。保安官は威信に掛けて彼を十六号独房に閉じ込める。酔っ払ってルディー・ヘンクルが収牢されたこの夜、レームは見事に脱獄してみせる。彼の取った方法は、彼は今どこにいるのか。
 『古い田舎宿の謎』:
 田舎宿に強盗が押し入り、宿屋の主人ストークスが銃殺された。カウンターにいた客室係ベニーは、ウェスタンハットを被った男が廊下を走り出て裏口から出て行ったと言う。だが、その裏口は内側から閉まったまま、犯人が逃げ出た気配はない。宿の中にいたのは家政婦のミセズ・アダムズと客のジェフ・ホワイトヘッド。犯人は誰か、どうやって逃げたのか。
 『投票ブースの謎』:
 現職のレンズとオーティスの保安官選挙の当日、投票ブースに入ったオーティスが何者かに刺されて死んだ。投票ブースの中は当然彼一人きり、凶器のナイフもどこにも見当たらない。彼を殺したのは誰か、凶器はどこに消えたのか。
 『農産物祭りの謎』:
 農産物祭りの夜、旅回りのミュージシャン、マックスが殺された。死体が見つかったのは百年後に開ける筈だったタイム・カプセルの中。町中の人間が次々に記念の品を入れ、目の前で埋められたカプセルの中にいつ死体は入ったのか。
 『古い樫の木の謎』:
 ノースモントで映画の撮影が行われた。飛行機から飛び降りたスタントマンは風に流され、樫の木に引っ掛かる。駆け寄ってみると、スタントマンは死んでいた。首には針金が巻き付けられ、それで殺された様子。パラシュートの紐を引くまでスタントマンは生きていた筈、一体彼はいつ絞め殺されたのか。

 『長い墜落』:
 霧の深いある日、ビルの21階から秘書の悲鳴。社長のビリーが窓ガラスを割って飛び降りたと言う。だが、死体が見つからない。ビルの途中に引っ掛かっているのが霧で見えないのかとも思われたが、霧が晴れてもその姿はない。どういうことか分からないまま役員たちが解散し始めたその頃、ビリーは上から落ちてきた。今死んだばかりだと言うその死体は、3時間45分もの間どうしていたのか。…

 確か、北村薫氏の『ミステリ12ヶ月』で紹介されていたもの。薦められていたのは『長い墜落』だったので、収録されていたこの本を借りて来ました。
 次の作品が前作のラストで紹介される作りなんか、初期のペリー・メイスンシリーズを思い出したり。トリックとしてはもう古かったり無理があったりするものもあるんですが、「何で!?」と言うヒキは十分。でも今の医学では司法解剖されたら一発でわかるだろう、って事件もありました。…ミステリファンとしては夢のない時代になりましたね~(苦笑;)。まぁ、古き善き時代を楽しむのが正解でしょう。