読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

天と地の守り人 第一部・第二部・第三部  上橋菜穂子著/二木真希子画   偕成社ワンダーランド  2006・2007年

 『守り人』シリーズ最終章。
 ネタばれあります、すみません;
 
 サンガル王国からの帰途、タルシュ帝国に対抗するためのロタ王国との同盟を目的に船上から姿を消したチャグム。父・帝が新ヨゴ皇国で取った行動は、盛大な葬儀と鎖国政策だった。
 新ヨゴ皇国から出られなくなったロタ人やカンバル人を故国に帰す手伝いをしていたバルサは、その途中、山中でジンからの手紙を受け取る。チャグムが生きていること、やろうとしていることの無謀さを知ったバルサは、チャグムを探してロタ王国の港町ツーラムに向かう。
 チャグムが手放した宝石タルファ〈紅炎石〉を手掛りにチャグムの足跡を追うバルサ。チャグムを監禁していたロタ南部の大領主・スーアンに襲われるが、危ういところをタルシュ帝国ラウル王子の密偵ヒュウゴに救われた。バルサはヒュウゴから、タルシュ帝国も決して一枚岩ではなく、兄王子ハザールと弟王子ラウルが次の皇位を狙って争っている情報と、カンバル王国とロタ王国との同盟を成功させた方がよい、と言うアドバイスを貰う。
 更に二人を襲うロタ王の呪術師カシャル〈猟犬〉。バルサは傷ついたヒュウゴを逃がし、自分はカシャル〈猟犬〉の頭領に会う。チャグムがスーアンの元から逃げ出し、ロタ王弟・イーハンと会うため北に向かった事を教えて貰うバルサ。一度は新ヨゴに帰りかけたものの、ヒュウゴの伝言からタルシュの刺客もチャグムを狙って動き出したことを知り、再びチャグムを追う。
 バルサがイーハン王弟に会ったのは、既にチャグムが新ヨゴとの同盟を断られ、カンバル王国に向かっていた頃だった。またチャグムを追うバルサ。ようやく雪の中、刺客に襲われていたチャグムに追いつく。
 カンバルへ辿り着いたバルサとチャグムは、ジグロの甥にして王の側近〈王の槍〉の一人、カームを訪ねる。だがカームは既にタルシュと内通、帝国に屈する腹積もりだった。タルシュ帝国の欺瞞を暴き、ロタとの同盟を必死で説得するチャグム。バルサの手引きも功を奏し、カンバルとロタの同盟を取り持つ。カンバル兵はチャグムと共にロタへ行き、そのまま北の大陸からタルシュ軍を追い出すため新ヨゴ皇国へ向かう。
 タンダの身を案じ、バルサはチャグムと別れて新ヨゴに帰る。タンダは草兵として新ヨゴ皇国軍に徴集されていた。タルシュ軍に手も足も出ず、散々に打ち負かされる新ヨゴ軍。その中にタンダの姿もあった。
 新ヨゴ皇国軍にも見放された民は、バルサの勧めもあってロタ王国へと逃げる。そこで新ヨゴ皇国へ向かうカンバル・ロタ連合軍を引き連れたチャグムと出会う。タルシュ軍を打ち破り、帝の元へ参るチャグム。丁度その頃、この世界はナユグの春の到来の影響を受け、大きな災害に見舞われようとしていた。
 父・帝と相対するチャグム、川の氾濫を警告しようと奔走するトロガイ。タルシュ国内では皇位争いが激化し、征服された国々の不満もあちこちで噴き出し始めていた。バルサは瀕死のタンダを探し、戦場跡を歩く。…

 最終巻らしい最終巻でした。今までの人と人との関わりが全て生きて繋がってくる。チャグムやバルサと北の大陸中を旅しました。ただ、シハナの扱いがちょっと中途半端だったかな。
 チャグムは父と向き合い、ナユグからの誘惑も自分の手で振り切る。望まないながらも自分の責務から逃げず、帝としての道を歩き始める。「まぁ、こんなに大きくなって…」と気分はすっかりお母さんでした(笑)。
 驚いたのはバルサとタンダの関係でした。「腕の中で」って表現が出て来てちょっとびっくり。…この二人、そういう関係になってたの? まぁ決して不思議ではないし、私の邪推かもしれないし。でも、バルサの「私のつれあいです」発言はちょっと感動しました。タンダ、聞こえてたかな?(笑) 腕を切り落とすシーンは本当、泣きそうでした。
 帝にしても、あの価値観は決して理解できないものではない。チャグムは結局父殺しはしなくて済んだんですよね。納まるところに納まったラストは、予定調和と言えなくもない。主要人物きっと誰も死なないな、と疑いなく信じられてしまうのがほんの少し物足りない、かも。これだけざくざく読んで言う台詞ではないですが(笑)。
 それにしても。〈精霊の卵〉が孵化して以降、この先100年は大きな災害はないんじゃなかったっけ?(笑) 宮が流されるほどの洪水は、十分大きな災害だと思うんですけど(笑)。