読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

流れ行く者―守り人短編集―  上橋菜穂子著/二木真希子絵  偕成社ワンダーランド  2008年

 守り人シリーズ「番外編」に当たる短編集。
 バルサがまだ13歳だった頃のエピソード。

 『浮き籾』
 山家の娘が山犬に襲われた。村人たちは、旅芸人になって野垂れ死んだオンザが山犬にとり憑いたのではないかと噂している。稲についた害虫・黒虫もオンザの崇りだと言われるが、タンダには納得がいかない。トロガイ師の家で一人留守番をするバルサについて来て貰って、タンダは夜の山道で山犬に対峙する。… 
   …タンダの優しさが表れた一作。タンダ、いい子だったんだねぇ。
   
 『ラフラ<賭事師>』
 酒場の給仕をして働くバルサ。ススット(サイコロ賭博)で若者・アールの代わりにサイコロを振って負け分をチャラにしてやったが、相手に因縁をつけられる。助けてくれたのはラフラと呼ばれる専業の賭事師、アズノという名の老女。この地域を治めるラダム氏族長の重臣ターカヌと、50年もの長きにわたって<ロトイ・ススット>(長いススット)を戦っている。老いたターカヌに屋敷に招かれ、孫のサロームも加わったススットに勤しむアズノ。賭場のススットとは違う名勝負を繰り広げる中、ターカヌは最後の勝負を公開にして、アズノに金を取らせようと言い出す。…
   …アズノの望みをとうとう理解できなかったターカヌ。厚意から出ていることなんだけど辛い。

 『流れ行く者』
 酒場の用心棒をしていたジグロは因縁を付けて来たならず者を追い払ったが、酷い傷を受けて寝込んでしまう。酒場の主人に疎まれて腹を立てるバルサ。ジグロは熱が下がった時点で、またヨゴ国に戻ることを決意。トッツアル(薬草酒)を運ぶ隊商の護衛士として北部に向かう。雇い主・商人のトキアンは父親から隊商を譲り受けたばかり、舐められまいと尊大な態度で、老いた護衛士にも敬意を払う様子はない。病を得たスマルは狩りの仕方などを教えてバルサを可愛がりながら、自分の暮らしを語る。難所・タカウの涸れ峪で盗賊に襲われる一行。荷馬車は枝峪に入り込み、スマルは後を追う。はぐれたバルサも、スマルと合流しようと枝峪に入る。…
   …初めて人を、しかも知人を手にかけて、嘔吐しながら悲鳴を上げるバルサが心に痛い。
   それをかき抱くジグロも。

 『寒のふるまい』
 人間の食べ残しを冬山の獣たちにふるまうタンダ。雪が降りしきる中、遠くに見覚えのある人影を見る。…

 本編では冷静で酸いも甘いも噛み分けたバルサがまだ若い若い(笑)。感情にも流されるしジグロにはどやされるし。でもどちらかと言うと村の生活を描く方がメインのような…(笑)。上橋さんの頭の中でこんなにもしっかり世界ができている事に、改めて凄いと思わされました。元になると言うか、参考にした文明があるとは思うんですが。
 「物語」がメインだった本編に比べ、本当に個人がしっかり描かれている。上橋さん、短編も上手いなぁ。