読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

神の守り人 来訪編/帰還編  上橋菜穂子著/二木真希子画   偕成社ワンダーランド  2003年

 守り人シリーズ4作目。
  
ロタ王国北東の外れ、シンタダン牢城で、一人の女が処刑された。罪状は、かつてロタ王国建国の時、ロタ王に退治された神・タルハマヤを再び呼び起こそうとしたこと。実際、タルハマヤは彼女の娘に宿っていた。母を殺された娘・アスラはその力を解き放ち、牢城中の人間を虐殺する。そのまま放心したアスラを連れて、兄のチキサは逃亡。だが、新ヨゴ皇国との国境の宿場町で、人買い商人に売り飛ばされそうになる。またしても神の力を使うアスラ。薬草市のため丁度同じ宿に泊まっていたバルサとタンダは、訳の判らぬままこの兄妹を助ける。
 やはり同じ宿に泊まっていたロタ王国の呪術師・スファルは、アスラの体に宿ったものの正体を知っていた。大昔、強大な力で暴政を敷いたサーダ・タルハマヤ〈神とひとつになりし者〉の復活を阻止するため、娘・シハナを初めとする仲間達と共に兄妹を連れ去ろうとする。かつての自分を重ね合わせ、アスラを助けるバルサ。タンダとチキサは二人を逃がそうとしてスファル達に捕まり、却ってバルサとの交渉材料として使われる。
 バルサと旅をするアスラ。隊商について今まで知らなかった世界を知り、様々な人に出会う。吹雪の中狼の群れに襲われ、とうとう自分の意思でタルハマヤを呼び出してしまう。
 残虐なタルハマヤ神を肯定したいアスラ。盗賊に襲われバルサと離れた隙に、近づいてきたシハナにその考えを支えられ、担ぎ上げられる。シハナは自分の敬愛する王弟・イーハンに、タルハマヤの絶大な力を与えて世界を変えたいと思っていた。
 貧しい北部と豊かな南部との反目、恐ろしい神を崇める者として長く迫害されて来たタルの民の不満。革新と保守、南のタルシュ帝国からの、一見甘言にも思える侵略。ロタ王国の問題が表に噴出する中、アスラの中の神がまた血を欲する。バルサはタンダ、チキサと共にアスラを取り戻そうと奔走する。…

 面白かったです。『虚空の旅人』からの流れですね、大きな国の動きがありそう。
 強大な力を手に入れて、今まで迫害されてきた一族の若者たちが立ち上がる。神話・伝承はあくまで施政者側から都合よく捻じ曲げられたもの、本当はどうだったのかはわからない。現在起こっていることでも、正義はどちらの側にもありますものね。ましてや大昔に起こったことでは…。
 バルサはそんな大きなことには関心がない。ただ、自分と同じ轍を踏ませたくなくて、アスラを助ける。
 相変わらず言葉遣いは独特。ここまで凝らなくてもいいんじゃないかな、とも思ってしまう面もあり(笑)。時間の単位なんかは一緒でいいと思うんだけど。
 シハナは次も出てくるんでしょうね、なかなか手強いライバル登場です。