読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ぼくがぼくになるまで 沢村凛著 学習研究社 2005年

 ネタばれになってる気がします、すみません;

 気が付くとぼくは暗闇の中にいた。何も見えない、聞こえない。声を出そうにも体すらないようだ。ぼくは必死で考える、ぼくは何を覚えているだろうか。
 ようやく思い出したのは青い色、空の色。次の瞬間、ぼくはモズになって飛んでいた。職務中にデートするお巡りさん、子供を捜す親、クラスメイトにからかわれる少年、色々な物を空から見る。空高く飛ぶのはとても楽しかったのに、赤い屋根の家を見るなりぼくはその窓に突っ込んで行ってしまう。
 また暗闇に戻ったぼく。また改めて考える。本当はぼくは鳥ではなかったのではないか? 地面を踏みしめる印象を思い出し、そしてぼくは犬になった。
 カオルとミノルの姉弟に拾われたぼくはルルと名付けられた。幸せなはずなのに、夜になると何故か吠えたくてたまらない。それも通りを挟んだ隣りの家、赤い屋根の岩氷さんの家に向かって。この前から行方不明になっている小学生・七星直斗と隣の家が関係しているのではないか、と思ったカオルはあちこちから証言を集める。岩氷さんの庭に落ちていたと言うホイッスル、鳥が突っ込んで壊れたと言う防音ガラス製の窓、兄を亡くした直斗が心の拠り所にしていた人形。カオルたちの両親に声帯を取る手術をされそうになって、ぼくは逃げ出す。そこで車に轢かれてしまう。
 もう一度ぼくは考える。どうしても直斗を見つけださなければならない気がする。ぼくは人間だったのではないだろうか。…ぼくは女の子になっていた。
 カオルとミノルに再会したぼく。ミノルの友人・オカルト好きの天地くんの証言から、岩氷さんは子供の命が必要なのではないか、直斗は岩氷家に閉じ込められているのではないかと推測する。でも大人に話してみても、誰も本気にしてくれない。ぼくたちは岩氷家に乗り込む決意をする。ぼくは一体誰なんだろう。…

 図書館で検索かけて驚きました。…沢村さん、児童書書いてたんだ、いつの間に! しかも挿画が岩崎つばささんですよ、まぁ懐かしい!(←分かる人にしか分からねーよ・笑)。
 面白かったです。予想したラストを見事に裏切られました。…そうだよな~、それじゃあまりにも単純すぎるとは思ったんだよ。
 カオルお姉ちゃんがかなり気が強くて思い込みも激しくてちょっと眉をひそめる所もあったのですが、まぁ許容範囲(笑)。彼女が事態をぐいぐい引っ張っていくのは快感でもあったし。
 それにしても岩崎さん挿画大変だったでしょうね~、鳥瞰図から犬目線の低い構図まで。変わらずあっさりした可愛い絵。「考える」ぼくのページは白黒反転してて、装丁ちゃんと凝って貰ってる。
 沢村さんはデビュー作『リフレイン』から追いかけてます。第一印象とはすごいもので、私は今でも沢村さんのNO.1作品はこれだと思ってます。未来SFで、無人の惑星に漂着した人々が集落を作って生き延びる話。面白かったんだ、面白かったんだけど、これがとにかく人に薦めにくい作品なんだ(苦笑;)。恩田さんみたいに読む人を選ぶとも思わないんですが、とにかく薦めにくいんだ。古い作品ですし、多分もう図書館くらいにしか置いてないと思うんですが、興味持たれた方は手にとってみて下さい。読んでみたらきっと解って貰えると思います(笑)。
 …何か趣旨がずれたな(苦笑;)。