読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

第三の時効 横山秀夫著 集英社 2003年

 F県警強行犯捜査係の面々を描いた連作短編6本。

『沈黙のアリバイ』:捜査一係、通称「一斑」の班長は朽木泰正。
 二人組みに現金集配車が襲われた。ボディガードの男が殺され、逃げ出した運転手は車で撥ね飛ばされた。目撃証言から主犯・大熊が、続いて共犯者・湯本の名前が挙がる。行方をくらませている大熊の代わりに湯本を引っ張るが取り調べは難航。ようやく得た自供を元に起訴に踏み切るが、湯本は裁判で罪状を否認、自分にはアリバイがある、とまで言い出す。――湯本は取調官の島津を罠に掛けた――。過去の過失から笑いを忘れた男・朽木が、被疑者・島津のツラの皮を剥ぎ取る。

第三の時効』:「二班」の班長は楠見。
 15年前、幼馴染みの本間ゆき絵を強姦し、その夫・敦志を殺した事件が時効を迎えようとしていた。犯人・武内利晴が、ゆき絵や、その時にできた子供・ありさの前に現れるのではないかと彼女たちの周りを張る二班の面々。うちの一人・森は、付き合っている女性を侮辱する楠見に対する反感もあって、武内に同情を禁じえない。第一の時効、犯人の海外滞在期間も加えた第二時効、犯人を起訴することによって生まれた第三時効――。楠見は冷徹に、犯人に罠を仕掛ける。

囚人のジレンマ』:F県警本部捜査第一課長は田畑昭信。アクの強い班長三人の上司として、頭の痛い日々を送っている。三班の人情派刑事・伴内主任の退官を目前に、殺しが三件。一斑は主婦殺しを担当、二班は調理師殺し、三班は証券マン焼殺事件。やがて事件に意外な繋がりが見え始め、記者をも巻き込んで、ぎすぎすした対抗意識ばかりが優先していると思われた捜査第一課の一面が現れる。

『密室の抜け穴』:「三班」の班長は村瀬。だが今は脳梗塞に倒れ、代わりに東出が班長代理に立っている。
 山中で発見された女性の白骨死体。容疑者として浮かんだのは暴力団組員・早田。マンションを囲んで張った包囲網から、早田は忽然と姿を消した。相手の面子を立てるためいやいや協力を依頼した暴対課との連携ミスか、東出に反感を持つ同期・石上が見逃したのか。驚異的な回復で捜査会議に加わった村瀬が、動物的カンを発揮して真相を見抜く。

『ペルソナの微笑』:一斑の若手捜査官・矢代勲は幼い頃、「道具」として自分の声を誘拐殺人事件に利用されたことがある。以来、矢代の顔には偽りの笑みが張り付いたままだ。同じく八歳の頃、犯人に利用されて自分の父親を毒殺してしまった阿部勇樹に密かな親近感も持っていた。それから13年、またも青酸カリを使ってのホームレス殺人事件をきっかけに、矢代は阿部に話を聞く機会を得る。

モノクロームの反転』:一家三人刺殺事件。一斑と三班の同時投入。どちらも張り合い、現場は三班が抑え、向かいの家にいた目撃者は一斑が抑え、と協力する気配は無い。やがて妻の小学校の同級生が容疑者として上がる。だが、被害者の葬儀の後、朽木は村瀬に情報の擦り合わせを申し出る。…

 いや~、文句なく面白かった!
 個性的で魅力溢れる刑事たち、推理小説としても上質、意外な結末てんこ盛り。横山さんてハズレないなぁ。
 なかなか出てこない村瀬三班長に早く会いたかったですね~、「動物的カン」ってどんなんや、って感じで(笑)。上司の田畑さんも何だかんだ言ってちゃんと部下のことを思って行動してるし。
 でもどの人も、身近にいたらやっかいそうだなぁ(笑)。