読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

犯人に告ぐ 上下巻  雫井脩介著  双葉文庫  2007年

 初出は2004年。
 第7回大藪春彦賞受賞、2004年「週刊文春ミステリーベストテン」第一位作品。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 川崎市で起きた連続児童殺害事件の捜査は行き詰りを見せ、ついに神奈川県警は現役捜査官をテレビニュースに出演させるという荒技に踏み切る。白羽の矢が立ったのは、6年前に誘拐事件の捜査に失敗、記者会見でも大失態を演じた巻島史彦警視だった。
 史上初の劇場型捜査が幕を開ける。犯人[バッドマン]を名乗る手紙が捜査本部に届き始めた。巻島は捜査責任者としてニュース番組に定期的に出演し、犯人に「もっと話を聞かせてほしい」と呼びかけ続ける。その殺人犯よりの姿勢に、世間および警察内部からも非難の声が上がり、いつしか巻島は孤独な戦いを強いられていた。
                                    (裏表紙の紹介文より)

 予約の本が途切れてしまい、読みたい作品が丁度書架にも見つからず、とりあえず「映画ちらっと見た気がする」「話題になってたよな」の印象で借りた本です。
 …面白かったぁ。
 私は基本的に通勤時間を読書に充てて、家に居る時は溜めてるビデオ見るとか友人から借りた漫画を読むとかそれ以外のことをするんですが(←掃除しろよ)、これは久しぶり、堪え切れずに休日も読んでしまいました。
 誘拐事件の身代金引き渡しから始まって、上層部の動きの悪さ、連携の悪さ、かてて加えて心臓の弱い娘の初産への不安に案の定の出血痙攣、命の危険。あと一歩の所での犯人捕捉の失敗。とにかくスピーディ、引きこまれてぐいぐい読めてしまう。
 左遷先で叩き上げの先輩・津田の助力も得て力を蓄え、連続児童殺害事件の責任者に抜擢されても、直接の上司・植草課長は事件より片思いの女を落とすことに汲々としてるし(あの姑息さがあと一歩好かれない原因じゃないのかな。真っ正直にぶつかった方が好感度は上がったんではないかしら)、元刑事のコメンテーター・迫田も結局捜査妨害になるような発言連発するし。
 本来ね、真犯人が後半30ページでようやく出て来るような話は推理小説じゃない、とか私は思ってるんですよ。でも、真犯人からの手紙の呼び水になった偽の手紙の本当の差出人とか、犯人を特定するための色の勘違いの利用とか、植草へのハメ方やり込め方、次から次ですよ。巻島が呼び出された時には、「え、こっちの事件も解決するの?」ってどきどきしたし、またその正体にも納得したし。
 名台詞も目白押し。津田長さんの、「人を叩き過ぎちゃあ、いかんのです……」「叩けば誰でも痛いんですよ……」「痛そうじゃないから痛くないんだろうと思ったら大間違いだ……それは単にその人が我慢してるだけですからな」はもう、かっこい――ッ!って感じでした。巻島の遺族への思わず溢れる台詞には泣きそうになりましたし。
 映画の方はぼんやりとしか覚えてないんですが、結構内容忠実に作られてますよね。巻島の容姿は始めからトヨエツで浮かびました。…若いお祖父ちゃんだ(笑)。でも植草の顛末は全然覚えてませんでした。カットされてたのかな、それとも記憶力の減退かしら;
 いや~、頑張って別の作品も読んでみよう。…これ以上追いかける作家さんを増やしたくはないんですけどね(苦笑;)。