読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

贖罪 湊かなえ著 東京創元社ミステリフロンティア 2009年

 湊かなえ三作目。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 取り柄と言えるのはきれいな空気、夕方6時には「グリーンスリーブス」のメロディ。そんな穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい殺人事件。
 被害者は小学四年生の足立エミリ、都会から転校してきた洗練された美少女。小学校の校庭でクラスメイト四人と遊んでいた所を、見知らぬ男に更衣室に連れ込まれて乱暴された上殺された。
 犯人と目される男の顔をどうしても思い出せない四人の少女に、エミリの母親・麻子は言葉を投げつける。時効までに犯人を見つけなさい、それができないのなら、わたしが納得できるような償いをしなさい。幼い四人の心を、その言葉は呪縛した。
 フランス人形のような容姿をした紗英は、大人びたエミリが犯人に選ばれた恐怖から、大人になることを拒絶した。いつまでも来ない生理、しかし付き合い始めた恋人は、そんなことは気にしないという。彼は紗英を人形のように大切にするとプロポーズし、一緒に向かった夫の赴任先・スイスで、悲劇は起きる。
 誰よりもしっかりしている、と評されていた真紀。長じて小学校の教師になった彼女は、授業中プールに入り込んで児童を襲った不審者を撃退し、不可抗力で相手を殺してしまう。子供を助けたことより、犯人を死なせたことを過剰防衛として責められた真紀は、PTA臨時総会で人前に立ち、今回の事件ととエミリの事件について語る。
 身体の大きかった晶子は、その後引き籠りになった。自身を「くま」と表現した晶子は、可愛らしいものに憧れながらも引け目を感じ、「身の丈以上のものを求めない」卑屈な性格に育った。そんな彼女を優しく見守る兄は、子連れの女と結婚し、その子が晶子には、いつしかエミリと重なってしまう。
 近眼がひどくて、目つきが悪かった由佳。喘息の姉が家族の中心にいて、自分はいつも脇役だった。殺人事件の目撃者になっても、家族には構って貰えない。万引きや夜遊びを繰り返した後更生した彼女は、姉の結婚相手に恋をする。彼の子供を妊娠したことで、漸く中心人物になった。
 四人はそれぞれ、別のルートから一人の名前を導き出す。麻子はそれを聞いて驚愕する、何故ならその男は、麻子が結婚する前に、つきあいのあった人物だったから。…


 いやぁ、迫力。途中でやめられませんでした。お母さんをはじめ、みなさん結構イヤな人ばかりなのに(苦笑;)。真紀の総会での嫌味なんて、それ本当に言ったら爽快だけど駄目だろう、って表現多々ありましたし。麻子の告白の後の真紀と由佳のお喋りなんて、結局麻子を責めてるもんなぁ。
 でも、連想したのは辻村深月さんの作品群なんですよね。妙な所で女の友情が通じ合ってる気がして。
 晶子の従兄はどうして兄の結婚を反対したんだろうとか、細かい疑問は残るんですよね~。犯人がどうなったかも描かれてないし。…でも自殺かなんかしたんだろうなぁ。
 表紙の絵が、実は凝っていて。いちごやラズベリー、ブルーベリーの中にこっそり赤い石の指輪。ああ、ちゃんと愛情持って作って貰ってる本だな、と思いました。