解体諸因 西澤保彦著 講談社文庫 1997年

　初出は1995年。様々なバラバラ事件を扱った短編9本収録。
　ネタばれしてます、すみません；

第一因　解体迅速：
　松浦康江（38歳）が殺された。鈍器で後頭部を殴打、昏倒した所を絞殺。その上裸にされて、両手両足で和室の柱を抱え込んだ恰好で手錠を掛けられ、そのままノコギリでバラバラに切断されるという猟奇的なもの。一週間後、土居淑子（23歳）が襲われる。同じ恰好で柱に縛り付けられ、だが、彼女は助かった。代わりに傍には交通事故がきっかけで知り合った恋人・坪井純也の死体。淑子を殺そうとした犯人は坪井の突然の訪問に驚いて、彼を殺して逃げたらしい。淑子の証言で、康江につきまとっていた男・植田隼人が容疑者として浮かび上がる。匠千暁が、中学教師のヤスヒコの話を元に真犯人を指摘してみせる。

第二因　解体信条：
　女子高教諭・辺見祐輔の教え子、双子の小菅亜紀子・麻紀子の元気がない。麻紀子の彼氏・川村正樹の姉・美穂の結婚を、お相手・花田晃の母親が認めないのだと言う。美穂の母親と晃の母親はかつて恋敵同士で、晃の母親は未だにそれを恨んでいるらしい。そのうち、晃の母親が、指まで細かく切断されたバラバラ死体で見つかった。晃、美穂、廻り回って正樹まで疑われる始末。祐輔が真相を見抜く。

第三因　解体昇降：
　マンションの8階からエレベーターに独りで乗った女が、一階に到着してみると死体になっていた。しかも首と左手脚が切断されている。乗り込んだのを見たのは大学生の二人連れ、尾崎と横田。一階には老夫婦が待ち構え、エレベーターが途中停まった気配は無い。近所でビデオテープを大量に買い込んだ男の目撃証言を聞き、入院中の中越正一警部が犯人を言い当てる。

第四因　解体譲渡：
　辺見祐輔がお見合いをした。相手は藤岡佳子、祐輔がいつもエロ本を立ち読みする本屋で出会う美女。佳子がこの間見かけた、100冊以上もの成人雑誌を買った5,60歳の女性の話を聞いて、祐輔は先日あったバラバラ殺人の真相に思い当たる。恋人・鹿島扶美（被害者）と二股相手の穂積陽子（骨折して入院中のためアリバイ成立）を両天秤にかけた真田アキラという男が、本当に犯人なのか。

第五因　解体守護：
　大学生・高瀬千帆の家庭教師先で、末っ子の男の子のクマのぬいぐるみの左腕がもがれるという事件が起きた。長女が大切にしていたハンカチも見当たらない。所が次の日、その左腕にハンカチが巻いてあるのが発見された。相談を受けた匠千暁が、事実を見抜く。
　　…これが一番ありそうだったな。

第六因　解体出途：
　匠千暁は叔母から、娘・香里と若木徹との結婚を阻止して欲しい、と頼まれる。理由は叔母と若木に肉体関係があるから。夜中若木のアパートを訪れると、中からダンボールを運び出す不審人物の影、部屋は血塗れ。叔母の飛び降りで事件はけりがついたと思われたが…。

第七因　解体肖像：
　喫茶店でバイトする匠千暁に、小菅亜紀子・麻紀子が話す。友人・島岡万里子の出ているポスターの、首の部分だけがくり抜かれているらしい。万里子はその美貌を利用して詐欺まがいのことをしかけ、怒ってきた学生・兼松建夫が殺されるきっかけを作っていた。ポスターに悪意ある悪戯をしているのは建夫の母親・敦子ではないか、と噂が流れる。

第八因　解体照応　推理劇　『スライド殺人事件』：
　頭部を切り取られた女性の死体が次々と発見される。傍にはその前の死体の頭部が置かれていた。しかも頭髪を無残に切り取られて。最後に、犯人と思われる男の死体と頭部が発見されるが…。

最終因　解体順路：
　兼松建夫の母親・敦子が、島岡万里子と間違えて鹿島扶美を殺した。真田アキラは万里子が扶美を殺したと思い込み、もう一人の恋人・穂積陽子のせいにしようと、証拠隠蔽のためバラバラにした。アキラの妹・奈津代は兄を堕落させる陽子を嫌い、自分の恋敵・土居淑子を憎んで、二人を殺してその頭部を交換、自殺した。奈津代の恋人・松浦裕一は事件にどう絡んでいるのか。数々の事件の真実が明らかになる。…

　べるさん、abeさんお薦めの『解体諸因』。
　はじめのうちは「おっ、安楽椅子探偵、好き～♪」「でも死体をバラバラにする理由としてはちょっと無理がないか？」「何か蘇部さんの匂いがする（笑）」等々、お笑いテイストで読んでいたのですが。
　第九話・最終因で目からウロコ。確認するため前のページをめくり倒しました。沢山出てくる名前になかなか付いて行けなくて頭くらくら。…この頃人の名前覚えられなくなってるんだよう～；；
　そうかぁ、時系列がばらばらだったのも伏線だったのね～、ってこれもバラバラ事件の一端か!?
　とんちんかんな推理を披露した辺見祐輔が、ちょっと可哀想な気もしました。…私もまんまと騙された訳やしね（笑）。いやぁ、すっきり、やられました（笑）。