読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

夢の守り人 上橋菜穂子著/二木真希子画 偕成社ワンダーランド 2000年

 『守り人』シリーズ第三弾。

 呪術師見習いの薬草師タンダの姪・カヤが、眠ったまま目覚めない。この世界と重なり合う別の世界で咲く花が、養分として人の夢を必要としているためらしい。先日皇太子を亡くした一ノ后や、現皇太子チャグムまで眠り込んでしまった。呼ばれたのはこの世を儚み、夢の世界での幸せを望んでいる人の魂。誘ったのは放浪の歌手、リー・トゥ・ルエン〈木霊の想い人〉ユグノの歌声。但し、ユグノ本人にその自覚は無い。
 呪術師トロガイは、自身も50年ほど前この花の開花に深く関わった経験から、この現象を静観していた。だがタンダは一人で〈魂呼ばい〉を行い、反対に自分の魂を取られてしまう。人鬼〈花守り〉と化すタンダ。花が取り込んだ魂を持ち主に戻すまいと、ユグノを狙う。「どうやら〈花〉の性質が50年前と変わっているらしい」――眉を顰めるトロガイ。偶然ユグノと知り合った女用心棒バルサは、変わり果てたタンダを救おうと奔走する。
 タンダの魂は花の夢に捕われていたチャグムの魂を解放、言伝を頼んで元の世界に返す。チャグムの言葉は星読博士のシュガを経てバルサやトロガイに届く。〈花〉の咲く湖のほとり〈山ノ離宮〉へ向かう一行。こちらの世界とあちらの世界が最も近づくその時、ユグノの歌声で花が散る風を起こさせようとするが、〈花守り〉タンダが邪魔をする。
 タンダを救おうと、バルサ、トロガイ、チャグムが命をかける。〈花〉が変容した理由とは。…

 辛い運命、意に染まないながらも流されるしかない自分に絶望し、夢に逃げ込む人々。他人まで巻き込んでしまう心の醜さが露呈する。慰め、諌めたのはかつて同じ絶望を味わったトロガイ。…この人にもまともな(?)過去があったのね~(笑)。
 前半のユグノの性格には多少ハラ立つ所もありますが、「風」だから仕方ないでしょう。風のヒューイの例もあることだし(笑)。
 …しかしこの作家さん、格闘シーン妙に詳しい…。関節技だの体術だのリアルに思えるんですが。
 気になったのは挿画。人鬼と化したタンダや魂が鳥の形を取って飛ぶシーン、あれを絵にしてしまうのはどうでしょう。読み手の想像力を奪ってしまう気がして仕方がない、特に児童書ですし。児童書でも「ここを絵にして下さい」って指定があるものなのかなぁ。