読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

砂漠 伊坂幸太郎著 実業之日本社 2005年

 仙台市内の国立大学に通う大学生の、学生生活を描いた長編。

 僕・北村は某国立大学法学部に入学するため、岩手から出てきた。
 春、新一年生が集まった飲み会で、変わった同級生と知り合う。やませみのような髪型をした鳥井、日向にいるかの如く温かい笑みを浮かべてスプーンを曲げる少女・南、愛想のない無表情な美女・東堂、そして愚鈍で理屈っぽくて周囲からしょっちゅう疎まれる男・西嶋。
 麻雀を覚え、近所の短大生・長谷川さん達と合コンし、主に鳥井が痛い目にあう。一つ年上のフリーター・鳩麦さんと交際。勿論授業には真面目に出席する一方、西嶋はバイトに励む。
 夏には海へ行き、また長谷川さんと出会い、空き巣騒ぎに巻き込まれて、鳥井が取り返しのつかない酷い目に会う。
 秋、東堂はキャバクラでバイトを始め、学祭では超能力論争「麻生vs鷲尾」に花が咲く。西嶋はシェパード犬を引き取って東堂に押し付ける。鳥井と南が付き合い始める。
 冬、ようやく西嶋と東堂は仲良くなる。空き巣犯の反抗予定を偶然知ってしまった北村は、南の反対を押し切って現場・東海林邸を見張る。その場は通り魔騒ぎではちゃめちゃになり空き巣犯は結局現れなかったが、その帰り道、北村と鳥井、南は空き巣犯と鉢合わせしてしまう。
 全編通じて下に流れる通り魔「プレジデントマン」のエピソード、キックボクサー阿部薫、パンクバンド・ラモーンズの歌、サン=テクジュペリからの引用。
 全てが最後に集結する。…

 面白かった…!
 恩田さんが書く高校生活も愛おしいけど、伊坂さんの書く大学生活もいい。思わずくすくす笑ってしまう。何か、1ページ1ページめくるのが勿体無い感じ。
 「蓼食う虫も好き好き」「蓼って何ですか?」「さあ」――北村、頑張れよ!(笑)
 鳥井や西嶋の実行あるのみのばかっぷりにはちょっと「…おい;」って突っ込みたい所もあったけど、こんな考えなしの行動は学生ならでは。鳥井への友情の示し方、西嶋の「中」のエピソードなんか、もう泣きそうになってしまいました。
 東堂さんも素敵。「許せるエロ親爺と、許せないエロ親爺がいることだけは分かった」――ナイス!(笑)。
 幹事の莞爾くんでさえ、最後には爽やかに決めてくれましたね~。
 作品のトリックには途中で「あれ、これはもしかして…」と薄々気が付いたのですが、何のためにそうしているのかが分からず(←馬鹿;)、「セドリック!」で「あっっっ!」。…眼から鱗。……ここまで来てどうして気が付かないんだよ、私; 
 今回、別の作品との繋がりは、西嶋が高校時代に出会った家裁の調査官だけだった気がするんですが、あれ、『チルドレン』の陣内さんですよね。西嶋くん、見事に影響受けてるなぁ。麻雀仲間の古賀さんが怪しい感じですけど、まだ読んでない作品の出演者かな。
 楽しみ、楽しみ♪