読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ダレカガナカニイル… 井上夢人著 新潮社 1992年

 東京の警備会社でポカをした「僕」西岡悟郎が飛ばされた転勤先は、山梨のド田舎だった。そこに居を構えた新興宗教団体「解放の家」と地元の人々が揉めているらしい。「僕」の仕事はその修行者たちの警備。と言っても設置された監視カメラを見張り続けるだけのようだ。
 「僕」が修行場に着いたその日、教祖の籠もっていた祈祷堂が炎上する。同時に「僕」を、何か柔らかいものが突き飛ばす。そしてその日から、「僕」の頭の中に、別人格――彼女――が住み始める。
 繰り返し見る自分が焼け死ぬ場面、その場で自分を見下ろす男の夢。それはおそらく「彼女」が死ぬ間際に見た光景。信者の一人・葉山晶子は、それは自分の母親である教祖・吉野桃紅だろうと言う。教祖は本当に殺されたのか、「彼女」は誰なのか。…

 岡嶋二人解散後、井上夢人さん最初の作品。…読んでませんでしたね~。すっかり読んだつもりになってました(笑)。
 この新興宗教、明らかにモデルあり。肯定的に描いているのが時代を反映しているような…。でも地元の人からあんな嫌がらせをされていたら、そして団体側に非がなかったら、確かに理不尽と思っても仕方ないかも。ただ、中島らも氏は『ガダラの豚』で、当時からあのインチキっぷりを露見してた訳ですしねぇ。
 頭の中の「彼女」がどうも教祖様より若く、性格もよく見えてたのですが、こういう結末でしたか!
 こういう飛んでる設定の話は岡嶋二人時代には無かったよな、井上さんの決意表明みたいだな、とも思った作品でした。