読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

チルドレン 伊坂幸太郎著 講談社 2004年

 連作短編集。

 鴨居は閉店間際の銀行で、強盗騒ぎに巻き込まれる。人質として後ろ手に縛られ、縁日で売っているようなお面を被せられたのは自分の他、銀行員と中年の婦人、盲目の青年・永瀬とそれに友人の陣内。何事にも立ち向かい、引っかき回す癖のある陣内は強盗犯にも余計な無駄口を連発、強盗犯の銃の発砲を招き、通報により駆けつけた警察に包囲されたまま三時間以上を過ごすことになる。そんな中、永瀬は冷静に犯人の真相を見抜く。果たして、人質が徐々に解放されて行く中、犯人は見事逃亡を成し遂げていた。:『バンク』
 家庭裁判所調査官を勤める僕・武藤。マンガ本を万引きした少年・木原志朗とその父親に面接し、二人の関係が上手くいっていない事を感じ取る。先輩調査官・陣内からアドバイスされ、志朗に芥川龍之介の文庫本『侏儒の言葉』を渡して再面接を命じた僕。どうやらこの本がきっかけで父親とも分かり合えたらしい。半年後、新聞に志朗が誘拐されていたとの記事が載る。:『チルドレン』
 女の子に振られた陣内の愚痴につきあってやっていた永瀬とその彼女・優子+盲導犬のベス。二時間も駅前広場のベンチで喋っていたが、そのうち周りの面々が二時間まるで変わっていない事に気付く。ビデオカメラ片手に騒ぐ女子高生たち、三十代半ばのカップル、不機嫌そうな親爺、ずっとヘッドフォンで音楽を聴いている青年、文庫本の同じページを読み続けている女性。自分の失恋にあわせて世界が止まってるんだ、とほざく陣内をよそに、この不自然な状況を永瀬が読み解く。:『レトリーバー』
 家事事件担当に移った武藤。離婚の調停がうまく行かない、どちらにも娘に対する誠意が見えないと嘆く武藤に、陣内は自分がギターを担当しているパンクロックのライブに、その夫婦を連れてこい、と言う。陣内はその時自分が担当していた少年・丸川明も同じようにライブに招待していた。:『チルドレンⅡ』
 デパートの屋上で陣内のバイトを見に来た永瀬、優子とベス。てっきりギターを弾くバイトだと思っていたが、そうではないらしい。優子を待っている間にバッグを盗まれそうになったり、いつもは判る陣内の足音が判らなかったり。陣内は確執のあった父親に偶然出会い、自分だとばれない方法でずっと溜めていた憂さを晴らす。:『イン』…

 「好きな作家」としてこの作者の名前を挙げてらっしゃるブロガーさんが多いので、どんな作品書いてる人なんだろう、と図書館で検索かけました。まぁ見事に全著書予約付き! そうか、「陽気なギャング~」の原作者だったのね、と自分の無知っぷりを自覚しました; …で、ようやく借りられたのがこの本です。
 …面白かった! 優しくてユーモアもあって、少し寂し気な所もあるけれど、読後感爽やか。二編目でいきなり時間が飛ぶので戸惑いましたが(これは陣内の父親の話か!?とか思っちゃったよ)、全編読み終えてみれば、確かにこの順番かも。初めは「傍迷惑で腹立たしい」陣内が、どんどん魅力的に見えてくるのが不思議。でもやっぱり好みは永瀬くんの方だけど(笑)。
 何だか前向きになれる作品でした。他の作品も読んでみよう。