読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

硝子のハンマー 貴志祐介著 角川書店 2004年

 年末の日曜日。都心のビル最上階、12階で人が死んだ。被害者は介護機器を扱う会社ベイリーフの社長で、死因は頭部の殴打。メンテナンス会社の窓拭きの青年が、窓の外から死体を発見した。廊下には監視カメラが設置されていたためそこからの浸入は考えられず、続き部屋にいた専務が容疑者として逮捕される。彼の弁護を引き受けた青砥純子は、他に浸入方法はないか、防犯コンサルタントの榎本径に相談を持ち掛ける。犯人は息子でもある副社長か、三人の秘書か、警備員か。やはり社長と共に会社の金を横領していた専務なのか。介護ザル、介護ロボット、監視カメラの死角、あらゆる可能性を考慮した上、榎本は真相に辿り着く。その以外な殺人方法は。…

 …素朴な疑問。何故秘書の伊藤さんだけ「伊藤さん」とさん付けで表記されてるんでしょう?
 第一部で事件発生から榎本がトリックに気付くまでが描かれ、第二部では犯人側からの犯行に至るまでの経緯が描かれる。…つまり第二部は『青の炎』と同じ様式ですね。
 今回気が付きました。この作者、蘊蓄をさりげなく入れるのが下手なんだわ。防犯アドバイザーが一々監視カメラや鍵の種類や性能・性質を説明するんですが、「いらんやろ、これは」ってことまで書いてある。それが少々鬱陶しくて、前半は読むのに時間かかりました。…で、ほとんど事件解決には不必要だったし(笑)。
 でも、犯人側から描かれると、書いてある蘊蓄は犯行に必要な知識になって無理なくすらすら読める。後半は早かったです。犯行方法は本当に意外だった。ただ、やっぱり、殺人を犯す必要はあったのかなぁとは思ってしまう。作者も懸命に犯人の背中を押してるんですが、『青の炎』みたいに「うんいいよ、あんたやっちゃっていいよ」って読者も思う位の説得力は、今回は無かったような…。あと、死体の場所はどうして動いていたんでしょう?? どこにも説明なかったですよね??