読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

捜査線上の夕映え 有栖川有栖著 文藝春秋 2022年

 社会人アリスシリーズ。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 コロナ禍の東大阪、マンションの一室で、男が鈍器で殴り殺された。死体はスーツケースに詰め込まれてクロゼットに押し込まれた状態、発見したのは恋人の歌島冴香。彼女は数日前、借りていたそのスーツケースを彼 奥本栄仁に返したばかりだった。
 元ホストだった奥本は歌島と付き合いながらも、歌島の友人 黛美浪にもちょっかいを出そうとしていたらしい。だが当の相手の黛は奥本への侮蔑を隠そうともせず、かえって歌島を気に掛けている。奥本に借金の返済を迫られていた久馬大輝も捜査線上に浮かび上がって来た。マンションの防犯カメラの映像には出入りする三人の映像、だが誰にも犯行の時間的余裕はないし、アリバイもある。それとはまた別に、奥本と黛の後をつけていたような男の目撃情報も現れた。
 ストーカー男の情報をいち早く掴んできたのは高柳真知子刑事、火村やアリスとも馴染みのある通称”コマチ”さん。ストーカー男 吉水蒼汰は黛の幼馴染みで、幼い頃 瀬戸内海の小さな島で一緒の小中学校に通った仲だったらしい。久々のフィールドワークに臨んだ火村は、アリスと共に、彼らの故郷 仲島に向かう。…

 相変わらずチャーミングな文章。思わず口元が緩むような表現、会話はやっぱり好きだなぁ。アリスが色々有り得ない可能性を並び立てるのも、うんうん、お約束お約束とにやにやしながら読みました(笑)。コロナ禍の現状をベースにしているのは何だか嬉しかったです。こういう言い方は不謹慎ですが、二人が同じ世界線にいるのが感じられて。いや、有栖川さん、『Day to Day』のアンソロジーでも書かれてましたが。
 後半、舞台が大きく変わる所で、とある人物の名前が出て来てびっくりしました。一瞬「…誰?」「あの人だよね??」と前のページ確認したほど。あとがきに曰く、「書きながら作者が『知った』こと」だそうで、そう言えば漫画家の北原文野さんも、とあるキャラクターの過去について「訊いてみたらそっと教えてくれた」とかって仰ってたなぁ、と思い出しました。火村の過去についてもいずれ書かれるのかな、その時は最後の事件になるのかな。
 トリックについては、マンションに入る方はともかく出る方はどうしたんだ、防犯カメラ映ってないんでしょ??と思ったり。また元のビルに飛び移ったの? 高低差は?? 私読み飛ばしたかなぁ、何回かページ繰り直したんだけど。
 火村さんがむきになって自転車を漕いだり、猫を可愛がったり、ファンサービスたっぷりでした。こういうとこがちょこちょこ書かれるんですよね~(笑)。