ドイツ デュッセルドルフ・アイスラー記念病院にて。脳外科医 ケンゾー・テンマは天才的な治療技術を買われ、院長からの覚えもめでたく、順風満帆に出世街道を進んでいた。だがある日、院長命令に逆らって、頭部に銃弾を受けた男の子を優先して手術したことから、病院での居場所を失っていく。
院長の所業を、ベッドに寝ている少年の傍らで、酔いに任せて思わず愚痴ってしまうテンマ。翌日、院長とその取り巻き二人は毒入りキャンディを盛られて殺され、少年とその双子の妹は姿を消した。
9年後。院長一派がいなくなったことによってテンマは出世し、外科部長まで昇り詰めていた。ある日彼の元に自動車事故の怪我人が運び込まれる。負傷者はドイツ各地で起きている、中年夫婦連続殺人事件の重要参考人らしい。テンマの手術で彼は助かるが、殺人犯については「モンスター」だと怯えるばかり。やがて、患者の前に現れた青年はテンマに、自分はあの時テンマに救われた子供だと名乗る。少年ヨハンは、長じて殺人犯になっていた。
殺された中年夫婦たちは一様に、男の子を引き取って育てていたらしい。テンマは病院脱走後の双子の兄妹の足取りを追う。双子はハイデルベルグでフォルトナ―夫妻に引き取られていたが、兄は早々に行方をくらませていた。調査を手伝ってくれた新聞記者マウラーと共に、フォルトナ―邸に急ぐテンマ。だが、ヨハンの妹ニナとテンマが誘き出された隙に、フォルトナ―夫妻とマウラーは惨殺されてしまう。現場に来た二人の刑事すら、ヨハンの手の者だった。
9年前、殺人鬼としての兄を知り、自分が兄を撃ったのだと告白するニナ。テンマと別れた後、刑事の一人を脅し、ヨハンを崇拝する闇社会の男”赤ん坊”の名を聞き出した。ニナは娼婦の振りをして”赤ん坊”に近づく。テンマも、夫婦殺しの嫌疑を掛けられ逃亡しながら、ヨハンを追う。旧東ドイツの孤児院511キンダーハイムで精神的実験材料とされ、その結果孤児院にいた全員で殺し合い、生き残った少年ヨハン。彼を理想の支配者と崇拝し、未だにヨハンを引きずる大人たち。その過程で救った少年ディーターに懐かれ、コソ泥のヘッケルと知りあい、テンマは人種差別主義者”赤ん坊”が企てていた、トルコ人街放火事件を防ぐ。…
先日読んだ浦沢直樹ガイドブックに刺激され、読み返してみたくなりました。完結時、友人に借りて読んで以来の再読です。
大人になったヨハンの第一声「お久しぶりですね、先生」が佐々木望さんの声で聞こえて我ながら驚きました。アニメ、そんなに熱心に見ていた覚えはないんですが。いや、豪華な声優陣だなぁとは当時思ってましたけど。
改めて読み返して、絵柄が案外コミカルだったんですね。『20世紀少年』は随分シリアスになってたんだなぁ、元々上手いのに、さらなる進化。
『20世紀少年』でも思ったんですが、案外ストーリー自体はまっすぐなんですよね。それに絡む人間を描くから、あちこち複雑に絡むように見える。これはガイドブックでも作者本人が仰ってましたが。
全てを失ったルンゲ警部も、退路を断ったエヴァ・ハイネマンも、テンマを追います。次巻に続きます。