読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

キッチン・テルちゃん なまけもの繁盛記 堀川アサコ著 角川文庫 2023年

 新卒で入った会社を1年で辞め、無気力に過ごしていた28歳の米田亜美。親戚の紹介で受けたお惣菜屋「キッチン・テルちゃん」の採用面接で、いかに「働くのがキライ」か力説した亜美だったが、店長のテルちゃんに気に入られ、アルバイトとして働きはじめる。
 いつもメンチカツを買っていく青年や、噂話が好きな社長夫人と接したり、夏の新メニューを提案したり、嫌なはずの仕事が意外と楽しいかも!? 
 所が「キッチン・テルちゃん」は、近々移転することが判明した。テナントとして入っているビルのオーナーが、不動産屋に勤めている孫息子の勧めに応じて、ビルを取り壊すことにしたらしい。せっかく馴染めた職場も期間限定、なのにその孫息子は亜美を見初めたらしく、色々声をかけて来る。でも、亜美が気になるのはメンチカツを買うメンチくんだ。
 近所で頻発している空き巣騒ぎ、それが発展したらしい強盗未遂、警察官を父に持つシンスケくんはその横暴さに心が冷め、家出してしまった。お総菜屋さん夫婦の間にも問題がありそうだ。結局亜美は、この仕事を辞めることになるんだろうか。…
 自分に合った働き方を見つける、令和のお仕事小説。 (裏表紙の紹介文に付け足しました)

 主人公の亜美ちゃんが、なまけものと言うことになってるんですが、でも元々優秀なんだろうなぁ。勤務一日目でレジ打ちや客さばきを見事にこなしてるんだもの。それともバイトとかで経験があったら、すんなりできるものなんだろうか。
 「死に物狂いで働くことを誓います」という定型文を素直に読めず、会社を辞めてしまった亜美ちゃん。…いや、こんなこと言わせる会社、今でもあるのかな。上司はともかく、誰かが「今のご時勢マズいですよ」と誰かがアドバイスしそうなものだけど。
 シンスケくんのお父さんにはちょっと本気でハラが立ちました。そうそう、こういう細かい積み重ねが心を削って行くんだよね、と思ってたら、…息子が寝込んでる間に愛犬を保健所に連れて行くとかさぁ、もう関係修復不可能でしょう。高校卒業するまで待て、という亜美ちゃんのアドバイスはしごく理性的で納得はしましたが、お金だけ出して貰って早々に家から出るか、母親の方に行った方がいいって。何だかほんわかと結末がついてましたが、「これでいいの!?」と思ってしまいましたよ。
 亜美ちゃん就職したものの薄給らしいし、これで大丈夫なのかな。孫息子とくっつくと安定はするかもだけど自立ではない気がするし、老後がちょっと心配です。