読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

いっちばん 畠中恵著 新潮社 2008年

 『しゃばけ』シリーズ第七弾。
 短編5本収録。

 『いっちばん』:
 町中で掏摸が横行している。犯人はどうやら打物屋の次男坊、遊び半分での行動らしいのだが掏った紙入れの運搬方法が分からない。若旦那にぼやく日限の親分を横目に、友達が遠くに離れて寂しがっている若旦那を喜ばせようと、妖たちは贈り物の算段に忙しい。三手に別れての買出しの最中、人に化けた妖たちは財布を掏られてしまう。

 『いっぷく』:
 江戸に唐物屋の小乃屋が店を出した。挨拶がてら、長崎屋は品比べを切り出される。小乃屋は同業の西村屋と組んで長崎屋の客を横取りしたい様子。嫌でも敵対心が湧くかと思いきや、小乃屋の跡取り息子・七之助は何かと若旦那に親しげに声をかけて来る。おまけに七之助は鳴家が見えている素振りもある。七之助は若旦那と関わりがあるのだろうか、品比べの日は迫って来る。

 『天狗の使い魔』:
 天狗は昔馴染みの修験者が死んでしまったことを悲しんで、せめて修験者の使い魔・管狐を世話しようと思いついた。所が管狐は稲荷神社に籠ったまま出てこない。大妖・皮衣の孫である若旦那を人質に管狐を手に入れようと、天狗は若旦那を攫ってしまう。丁度その頃、狐に居場所を奪われた狛犬が、やはり若旦那を狙ってやって来た。天狗の葉団扇を奪っての大騒ぎ、段々若旦那の咳が出て熱が上がって、でもこの場を治めようと、若旦那は天狗も狐も狛犬にも言葉を尽くす。

 『餡子は甘いか』:
 若旦那の幼馴染・栄吉は今、老舗菓子屋・安野屋に修行に来ている。だが相変わらず、菓子作りの腕は上がらない。店に砂糖を盗みに入った若者・八助の方が、小器用で人当たりがよくて、かえって店主に目をかけられる始末。とうとう板間を外されて、栄吉は本気で菓子職人の道を諦めようと決意する。

 『ひなのちよがみ』:
 先の大火事で紅白粉問屋一色屋は貰い火をし、建て直しがうまくいかない。一人娘のお雛も白粉を分厚くはたく余裕もなく、商売に工夫を凝らし、千代紙に包んでの白粉の販売を思いつく。順調に軌道に乗るかと思いきや、薄化粧になったお雛に錦絵屋・志乃屋の次男坊・秀二郎が懸想する。お雛の許婚・正三郎は面白くない。兄や達の言葉を受けて若旦那は、正三郎には店建て直しの企画を、秀二郎にはたっぷり白粉を塗り込んだお雛を見分ける案を出す。…

 前回で何となく終わりの気配が見えて来たかと思ったのですが、何の何の、続いてますね。寛朝も出て来たし冬吉とも会えたし、栄吉の奉公先もそんな遠くでもないようだし。
 相変わらず不器用な栄吉。現実はもしかしたらこんなに上手くは行かないんだろうけど、でもお話の中だけでは大成して欲しいもんです。努力を惜しまない才能を持っている、ってのはすごいことなんだから。…でも何でそんなに餡子が不味くなるんだろう??
 相変わらず若旦那、丈夫にならないなぁ。なったらシリーズ終わっちゃうけど(笑)。