読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

おやごころ 畠中恵著 文藝春秋 2023年

 『まんまこと』シリーズ第9弾。

 たのまれごと
 旗本 羽山家から「長男に悪行がある」と相談を持ち掛けられた麻之助。だが、長男の素行を調べても何も悪い所は出て来ない。念のため次男を調べると、裕福な商家の娘との縁談が持ち上がっていることが分かった。持参金付きの嫁を貰うには、次男が跡取りであることが条件らしい。家庭内のいざこざが、長男の居場所を失くしているようだ。

 こころのこり
 上方に本店を持つ江戸店の大店三店が、揃って失せ物探しを依頼してきた。今流行りの宮地芝居に影響された奉公人が、大坂の本店に戻る前に、それぞれの店の大事なものを隠したのだという。乾物類卸 和泉屋で無くなったのはおかみさんの螺鈿の櫛、書物問屋 丸屋は『浮世道中膝栗毛』の本、紙問屋 伊勢屋は売掛帳。麻之助はそれぞれの事情を鑑み、隠された意図を読み取る。

 よめごりょう
 麻之助の妻 お和歌と結婚するはずだったと息巻く男 太助が現れた。太助はお和歌の父の従兄弟の子だが、お和歌も舅もそんな話は出ていないと否定する。調べてみると、太助は幼馴染みのお琴を好いているらしい。お琴は先日結婚した友人の相手がDV男だったことにショックを受け、予め三行半をくれることを太助との結婚条件にしたと言う。

 麻之助走る
 お和歌の懐妊が分かって、麻之助は落ち着かない。あちこちを駆け回っているうち、町名主への相談事がどこも奇妙に減っていることを聞く。反対に高利貸しを訪れる客は増えているらしい。町名主に内緒で金が要る用事とは何か。麻之助は、神社に派手な布が並び、祭りの準備に華やいでいる様子を思い出す。

 終わったこと
 与力の娘 美衣がストーカー被害にあっている。家人の看病のため破談になった元許婚の所業かと怪しんだが、どうもそうではないようだ。美衣の命まで狙われて、麻之助は、この頃蔓延っているという 大名家を専門に狙う賊との関連を疑いはじめる。

 おやごころ
 麻之助の息子が生まれた。つきっきりで赤ん坊 宗吾の世話を焼きたい麻之助、だが皆は仕事に精を出せと言う。親子兄弟姉妹間の、やっていない仲裁ごとの噂ばかりが先行して 麻之助の評判がムダに上がっている中、縫箔屋羽奈屋の揉め事が持ち込まれた。妹娘ばかりを贔屓する親に対し、遠縁の元御殿女中が姉娘を気に掛けた、縁談がこじれて商談先まで巻き込まれているという。思いつく解決策が次々閉ざされて行く事態に、麻之助は頭を抱える。…

 DVにストーカー、児童(?)虐待と今日にも共通な題材が扱われる中、江戸店の慣習は新鮮でした。高田郁さんの『あきない世傳 金と銀』でも大坂本店の江戸店が描かれてましたが、視点が違うとこういう風になるのね~。『あきない~』の方は、従業員みんな優秀だし雇い主は温情たっぷりだし、こういう暗部はなかったか、もしくは何代か先にはこうなってるかもしれない状況なのかも、と思いました。
 こんな展開になるか、ちょっと無理筋じゃないかと思う箇所もありましたが、まぁそこはそれ(苦笑;)。
 麻之助は父親になりましたね~。今度の出産は母子ともに健康そうで、まぁ何より。麻之助の親バカっぷりも微笑ましい限りです。宗吾がこのまま健やかに育ちますように。