登極から半年、疾風の勢いで戴国を整える泰王驍宗は、反乱鎮圧に赴き、未だ戻らず。そして、弑逆の知らせに衝撃を受けた台輔泰麒は、忽然と姿を消した!
虚海のなかに孤立し、冬には極寒の地となる戴はいま、王と麒麟を失くし、災厄と妖魔が蹂躙する処。人は身も心も凍てついていく。
もはや、自らを救うことも叶わぬ国と民――。将軍李斎は景王陽子に会うため、天を翔る!
鳴蝕。山が震え、大地が揺れ世界が歪み、泰麒は、十の歳までを過ごした蓬莱(ばしょ)にいた。
帰りたい――。しかし、その術を知らない。
泰麒が異界でひとり懊悩する頃、戴国には謀反によって偽王が立ち、日ごと荒れていた。
その行く末を案じ、泰台輔と同じ胎果である誼の陽子を頼り、慶国を目指した李斎は思う。麒麟がいなければ、真の王はあり得ない、と。
そしていま、雁国をはじめとする、諸国の王と麒麟が、戴国のために立ち上がる! (折り返しの紹介文より)
私が十二国記をリアルタイムで追いかけたのはこの巻から。講談社文庫で一足先に出版されて、一か月か二か月か遅れでホワイトハート版が出るという形式で、私はホワイトハート版を待つことにしました(当然)。それにしても講談社、阿漕な真似をしやがる、と歯噛みしましたっけ(苦笑;)。
出版されてすぐと、この次の巻『白銀の墟 玄の月』が出る前におさらいで読んでいたので、今回が三読目くらいかな。そういえば『白銀の~』読了後に読み返すのは初めてなのか、と今回思い至りました。そうか、瑯燦出て来てたんだっけ。阿選への対抗勢力が、不思議なほど無力化されていくさまも、李斎を通じて語られてたな。他にも出てくる見知った名前、戴国の文官や武官たち。『屍鬼』を再読した時にも思ったんですよね、あら、この人こんな所でもう出てたんだ、って。この巻だけの登場人物なら、陽子に何度も意見をしては却下される官僚たちの姿も、初頭から描かれてましたね。
前例のない事態に狼狽える戴の朝廷、各国の首脳陣。このあたりがとにかく理屈っぽい(笑)。それだけ秩序立った世界ということで、陽子もこの世界の成り立ちに疑問を抱きます。これ 大オチあるんじゃないのかなぁ、と当時思ったのを、先日『神獣夢望伝』読んだ時に思い出しました。『神獣夢望伝』は、全てが神獣が見ている夢の世界、神獣さえも取り込まれている、という世界観の話だったので、そんな風な大きな世界設定があるんじゃないのかと。
泰麒の台詞「僕はもう、自分は無力だと嘆いて、無力であることに安住できるほど幼くない」は、当時、職場で中堅と呼ばれる立場になっていた私には、本当に耳に痛かった。それでも、戴に戻るのは もうちょっと体調が戻ってからにしたらいいのに、って思いましたし、今回もそれは思いました(苦笑;)。
『図南の翼』でも語られていた傾国時の備えの重要性は、この巻でも言及されていました。これ会社でも家庭単位でもそうなんだけど、平時には余剰に思えるんだよな。コロナ禍であんなに病院や保健所不足で騒いだのに、結局変わっていないように見える現状。せめて十二国の王は、賢君でありますように。