読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

図南の翼 十二国記 小野不由美著 講談社X文庫ホワイトハート 1996年

 恭国は、先王が薨れてから二十七年。王を失くした国の治安は乱れ、災厄は続き、妖魔までが徘徊するほどに荒んでいた。
 首都連檣に住む朱晶は、豪商の父をもち、不自由のない生活と充分な教育を受けて育った。しかし、その暮らしぶりとは裏腹に、日ごとに混迷の様相を呈していく国を憂う少女(むすめ)は、王を選ぶ麒麟に天意を諮るため、ついに蓬山をめざす! 朱晶、十二歳の決断。
 「恭国(このくに)を統べるのは、あたししかいない!!」
                  (折り返しの紹介文より)

 再読。「ああ、そうだったなぁ」と思い出す所もあれば、すっかり忘れてる所もあり(←こらこら)。利広の正体を知った上で読んでも、利広の台詞の意味を汲むのはややこしかった(←おいおい)。
 朱晶が思った以上に小賢しかったです(笑)。行動の意味を説明しない頑丘も不親切なんだけど、「何らかの意味があるんだろう」と思いながらもきゃんきゃん噛みついてるし(笑)。でもこれは、昇山の旅が順調すぎた、鵬翼に乗ってた所為もあるんだろうなぁ。頑丘と別れた後、妖魔に襲われ黄海の旅の大変さを痛感して、一気に理解が深まる。朱晶が人妖と出会う場面、言葉をそのまま返される所は、十二国記の中でも屈指のホラーシーンだと思っています。
 価値観の違う人々が、それでも分かりあう、分かりあおうとする、その第一歩を描いた作品でもあったんだな。朱晶はいつだって、相手のことを察そうとしていたし、分からないなら説明を求めていたし。最初に出てきた、いかにも朱晶に気がある男の子に対しても、相手が自分の気持ちばかりを押し付けて、状況を把握していないことを指摘してたし。
 犬狼真君が名乗った時には「あんたまぁ、立派になって…」と親戚のおばさんのような気分になったんでしたっけ。小説ならでは、映像がないことを利用した名シーン。小野さん、このパターンとにかく巧い。
 麒麟が王を慕う姿、王との邂逅を何の屈託もなく素直に喜ぶ描写があるのは、多分この作品がシリーズ初ですよね。何とまぁ、微笑ましくも艶めかしいこと。
 頑丘はその後、朱晶の臣下になったのかな。頑丘の性格からして断る気はするんだけど、でも政局が安定するまでは付き合ったかもな。何しろ朱晶、一国を巻きこめる運の良さを持ってるから(笑)。
 更夜が六太に会わない理由は何なんでしょう。六太を安心させてやって欲しいんだけど。