読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

忍びの副業 上下 畠中恵著 講談社 2023年

 徳川幕府も二百年以上が過ぎ、戦国時代に活躍した甲賀の忍びも、今では畑作業と笠張に精を出す毎日。技だけは代々繋いで日々鍛錬に励んでいるが、それも何の役に立つのか、上忍の弥九郎などは疑問に思っている。
 甲賀一族のくノ一の、お庭番との縁談が破談になった。あまりに急な経緯を不審に思った弥九郎たちが調べてみると、どうやら今、甲賀と結託するとみなされるとあらぬ疑いが掛けられるほど、幕府のパワーバランスが微妙な位置に振っているらしい。その渦中にいる世子徳川家基は、甲賀の力を認め、ボディガードの依頼をして来た。家基が無事将軍職に就ければ、甲賀一門の今後は安泰である。冷や飯を食ってきた甲賀は色めき立った。
 家基の命を狙う者は本当にいるのか。いるとしたら、老中田沼意次か、一橋家か、尾張徳川か。大奥の動きもおかしい。大奥の警護を担っていた伊賀者は甲賀を敵視するし、反対に根来は甲賀にすり寄って来る。鷹狩りの下見役の人間が一気に四人 食中毒で死に、またその下働きをしていた村人も、別の毒で何人も臥せる事態まで起きた。現場では銃の暴発や、熊の出現まであったらしい。
 複数の敵がいると予想されながらも、鷹狩りは遂行された。家基や側近が気付かない中、闘を繰り広げる弥九郎たち。敵をあらかた片付けて一段落したかに思えるのに、何故か弥九郎の胸騒ぎは治まらない。果たして、家基が腹痛を訴え、倒れたとの情報が入った。…

 歴史小説、になるのかなぁ。
 何故だかとにかく読むのに時間がかかりました。元が連載作品だったせいなんでしょうね、状況説明の繰り返しが多い。いやもうそのことは知ってるって、と読み飛ばそうかと思った箇所が多々ありまして; 忍者の待遇が江戸時代どう変化して行ったのか、どう生きのびていたのかは面白かったのですが(伊賀衆は大奥の警備についてたのね~)、畠中さん特有のほんわかした作風が、この題材に合っているのか首を傾げつつ。初期に話を引っ張っていた くノ一吉乃の縁談は案外あっさり片付いたし、御典医があまりにも無能じゃないかと思う描かれ方だったり、色々な事件の黒幕等にしても、結局「当の本人に訊く」という解明方法がメインで、それはどうなんだろう、と思ったり。
 私の中で盛り上がって来たのは最終話近辺になってからでした。鷹狩り当日、いくら敵を薙ぎ払っても不穏な予感は拭えない。どうしようもない結末、弥九郎の非情な決意。ダークサイドに堕ちたような(笑)。でもどこか雰囲気のんびりしてるんですけどね~。