読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

下鴨アンティーク 雪花の約束 白川紺子著 集英社オレンジ文庫 2016年

 シリーズ5冊目。

 星の糸     
 鹿乃の家を訪ねてきた男は、幼馴染みの女性を探していた。彼女――志織は婚約者に手酷く裏切られたばかり、そんな時に聞いた祖母 依子の遺言に順じて鹿野の家に預けられた着物を見に来た筈だという。どうやら志織は、祖母の実家跡などを先に見回っているようだ。春野の助けも借りて見つけた志織と同行して、鹿乃たちは依子の過去を探る。実は依子も、若い頃婚約破棄の憂き目にあっていた。婚約中に誂えた着物の柄は苧環から伸びた赤い糸、だがその赤い糸は途中で切れている。鹿乃はその糸を、ギリシャ神話のアリアドネになぞらえる。

 赤ずきんをさがして
 祖母に預けた着物を、処分するから返して欲しいとの手紙が届いた。意匠は能の桜川、紅葉と小袖柄の鮮やかな着物だった筈なのに、みるみる間に真っ赤に染まってしまう。持ち主はその赤を嫌悪していた。父と自分を捨てて年下の男に走った母親の、真っ赤な口紅と同じ色だと。父親違いの弟も、その着物に見知らぬ姉を見ていた。母親は鬼を見ていたという。

 雪花の約束
 蔵にあった雪華文の着物は、周囲に雪を降らせた。どうやら父の同僚から預かった品らしい。今の持ち主は娘で、着物は母の遺品だという。父親は雪の研究者だったが吹雪で亡くなり、母は雪を嫌っていたと。だが、過去の話を聞くうち、母を誤解していたことに気が付く。母は、雪を愛していた。父の代わりとして。

 子犬と魔女のワルツ
 鹿乃がまだ幼かった頃。高校二年の良鷹は、骨董屋《如月堂》にあった子犬の水滴に気に入られてしまった。子犬に導かれるまま、良鷹と鹿乃は洋館の老婦人と出会う。夫に先立たれた夫人は、甥から金品の無心をされ、迷惑していた。…

 起こる不思議が着物だけに留まらず骨董に及んでくると、いきなり『雨柳堂夢咄』に似てくるんだなぁ、と思った一冊。
 ギリシャ神話でアリアドネが島に置き去りにされたエピソードは覚えていたのですが、その後ディオニュソスと結ばれたのはすっかり忘れてました。思わずギリシャ神話の本読み返しましたよ、ほんの一節でしたがちゃんと載ってました、苦ぅ; 宝冠云々は全く知らなかったなぁ。
 一歩一歩進んでいく鹿乃に感化され、慧は父親との関係を見直し始めました。良鷹のシスコンっぷりも明らかに、春野も積極的に動き出すようです。
 次巻に続きます。