読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

鹿の王 上 ――生き残った者―― 上橋菜穂子著 角川書店 2014年

 『鹿の王』上巻。

 強大な帝国・東乎瑠(ツォル)にのまれていく故郷を守るため、絶望的な戦いを繰り広げた戦士団“独角”。その頭であったヴァンは奴隷に落とされ、岩塩鉱に囚われていた。
 ある夜、一群れの不思議な犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。一晩で死滅した労働奴隷や監督官たちの間で何故か生き残ったヴァンは、やはり何故か生き延びていた幼子を連れて逃亡。山中で運よく知り合った若者トマに請われ、飛鹿(ピュイカ)の飼育方法を教えにオキへ向かう。
 岩塩鉱を視察した医師ホッサルは、奴隷たちが全滅した病が、250年前に故国オタワルを滅亡させた伝染病黒狼病(ミッツァル)ではないかと疑う。今までなりを潜めていた伝染病が、何故また復活したのか。折しも王侯貴族が集まる催事<御前鷹ノ儀>が狼犬に襲われ、東乎瑠帝国アカファ領主 王幡候の長子 迂多瑠(ウタル)が死んだ。この病にかかった東乎瑠人ばかりが死んで、占領された旧アカファ王国の人々は生き残る現実に、<アカファの呪い>という言葉が人々の間で囁かれはじめる。
 病が呪いである筈がない。ホッサルは治療の手掛かりのため、ただ一人の生き残りヴァンを捜し始めた。その任を命じられたのは旧アカファ王国の密偵を務めたモルファ氏族の女・サエ。彼女とヴァンは<谺主>スオッルの住む岩屋、温泉の湧く治療院で出会うが、そこも狼犬の襲撃にあう。何故か狼犬たちと心が通うことに気付くヴァン。だが、狼犬を相対している間に養い子ユナが攫われ、ヴァンはユナを追って雪の中に飛び出す。
 一方、ホッサルは局地的に発生する黒狼病らしき病を調査するうち、従者マコウカンの郷里へ向かうことになる。マコウカンはユカタ地方の出身、元々は火馬(アファル)の民、沼地(ユスラ)の民、山地(オファル)の民が暮らしていたが、今は東乎瑠帝国の政策により、移住民との混血が進み、それに伴って諍いも増えていた。…


 上橋さんの新作。
 いや~、こういう作品は状況把握にとにかく時間がかかってしまいます。出て来るカタカナが国名なのか地方名なのか役職名なのか人名なのか、人名ならば男なのか女なのかすら分からない(苦笑;)。今回粗筋書いてみて、そんなに話は進んでいなかったんだな、とちょっと驚いたくらいです。ヴァンがオキ地方で過ごした一年を丁寧に書いてたしなぁ。ホッサルの病の直し方の説明とかも。
 ワクチンだの抗生物質だのの知識がある、ステロイド剤や注射器まで開発している世界。でもワタリガラスに魂をのせて飛ぶ、という巫女さん的な人も、各部族に一人ずつ、みたいな感じで存在する。このあたりの混ざり具合は、難しい所だよなぁ、とちょっと違和感を覚えたり。
 下巻に続きます。