読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

子宝船 きたきた捕物帖(二) 宮部みゆき著 PHP研究所 2022年

 シリーズ2冊目。ヘタレで半人前の岡っ引き見習い・北一が、湯屋の釜焚き・喜多次とともに、様々な事件に翻弄されつつ成長していく時代ミステリー。
 ネタばれあります、すみません;

 第一話 子宝船
 赤子を亡くした家の宝船の絵から弁財天が消えていたらしい。北一が 絵を描いたという伊勢屋の源右衛門の家へ行ってみると、今まで絵を描いて貰っていた人々が押しかけて大騒動になっていた。差配人の富勘と回向院裏の政五郎親分立ち合いの元、問題の絵を 北一が扱うめでたい柄の文庫に収めて供養しよう、と算段をつけたが、どうも伊勢屋を陥れようとしたヤツらの気配がする。
 政五郎親分にもけしかけられ、北一は赤ん坊を亡くした多香屋と笹子屋にも回ってみる。宝船の絵を引き取って封じることを口実に。

 第二話 おでこの中身
 弁当屋の一家三人が殺された。悲惨な現場を見ていられず 外に出た北一は、見物人のなかに怪しげな女がいるのに気づく。女のうなじの下にあった銀杏の葉のような彫り物の手掛かりを得ようと、北一は政五郎親分の手下としてかつて働いていた三太郎――通称おでこを紹介して貰う。おでこは驚異的な記憶力で、見聞きしたことを自在に引き出せる男だった。

 第三話 人魚の毒
 弁当屋の事件は、女房が以前ストーカーに付きまとわれていたことから、そちらが犯人だろうと片付きそうな塩梅、だが北一はそれでは納得できなかった。
検視の与力・栗山周五郎のもとで事件の真相を探っていると、木更津湊でお上の御用を務めているという男 半次郎が訪ねてくる。北一がばら撒いた人相書きが当たったらしい。心当たりはお蓮という女、半次郎の幼馴染みで、村の唯一の生計だった染め物商家『染めちょう』の一家を附子毒で惨殺したという。その後の目撃証言から、質屋の隠居の世話係に押しかけているお蓮らしき女を見つけたが…。    (出版社紹介文に付け足しました)

 おでこが、おでこが出てきた――! しかも奥さん貰ってる―――!!
 弓之助は長崎で学者さんになってるのね、よかったねぇ。
 懐かしい顔がちらちら続々出て来て嬉しい反面、後半の事件はひたすら悲惨でした。宮部さん、こういう性根が腐ってる人物書くよなぁ、生まれついてでどうしようもない、更生するとも思えないキャラクター…;; 
 本筋とは違う所で、謎だった人物の正体も明かされました。椿屋敷の絵の達者な若君は女の子でしたよ、この裏事情もいずれ描かれるんでしょうか。
 いかにもきな臭い伏線も色々、お江戸の犯罪検挙率の高さを全否定(拷問の苛烈さは、『鬼平犯科帳』読んだばかりなので記憶も新鮮です)。貸本屋の村田屋治兵衛は28年前、新婚の奥さんを攫われて殺されているみたいだし、おかみさんの元で働くおみつさんは何だか恋をしている様子、これが何だか不穏に感じられてしまうんだよなぁ。
 三冊目が楽しみです。