読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

おまえさん 【上】【下】 宮部みゆき著 講談社 2011年

 シリーズ第三弾。
 ネタばれあります、すみません;

 煮売り屋お徳のお菜屋の近く、南辻橋のたもとで男の死体が見つかった。辻斬りにあったその男の人像が、亡骸を片づけて三日たってもまだ消えない。なかなか身元も確かめられず、すわ呪いの人像と人の口にも上る中、間島家部屋住みの老隠居・本宮源右衛門が、被害者は「血や体液が固まり易い病気」もしくはそうなる薬を飲んでいたのではないかと言い出す。折しも痒み止めの薬「王疹膏」を売り出し中の瓶屋の主人、新兵衛も斬り殺された。斬り口は同じ、袈裟掛けの一閃。両者の繋がりを探るうち、二人の以前の奉公先、大黒屋も巻き込んでの二十年前の罪――同僚の調剤人「ざく」殺し――が浮かび上がる。
 瓶屋の主人の美しい一人娘・史乃は後添いの継母・佐多枝をよく思っておらず、そのせいで父親との間もぎくしゃくしていたらしい。そんな史乃に、こっそり想いを寄せる若き俊英同心・間島信之輔。本所深川の“ぼんくら”同心・井筒平四郎は、そんな信之輔を応援したいが、ことはあまりうまく運ばない。
 そのうち、同じ斬り傷の亡骸、今度は夜鷹のお継の死体が発見された。
 ざく殺しの遺恨だと思われていた動機に、お継はどう関わって来るのか、それともまるきりの見当違いだったのか。
 富籤に当たったが故に身を持ち崩した仙太郎、富籤に当たった男に身受けしてもらったお継とお仲。貧しい女を「仕立て直す」ことを道楽にしていた玉井屋の千蔵、彼に見染められたおでここと三太郎の母・おきえの行く末と決意。弓之助のちゃらんぽらんな兄・淳三郎も現れて、やがて事件は解決に向かう。…


 このシリーズは、人の見た目の美醜もテーマの一つになってるのかしら。
 以前、宮部さんが何かのインタビューで、職人さんの手技、見事な細工もの等について、普通の人にはできないことができるというのも超能力の一つに思える、みたいなことを仰ってて。その伝で行くと、美しく生まれつくというのも才能なんだな、と今回読んでて思いました。
 信之輔さん、辛いなぁ。で、何もかも持ってるような淳三郎みたいな人もいて、で、しかも憎めないんだもんなぁ。何だか身につまされてしまった。
 夫に先立たれた女が何人も出て来ます。お菜屋のお徳は以前からのレギュラーでしたが、女差配人のおとし、医師である夫から新兵衛に「乗り換えた」と思われた佐多枝、玉井屋に拾われたおきえ。どの女性も「いい面」と「悪い面」が描かれる。おとしなんか極端でしたもんね(苦笑;)。おきえが三太郎だけを捨てた理由も、聞いてみれば納得できてしまう。
 実は前の話をほとんど忘れてしまっていたのですが(このシリーズは毎回これだなぁ;)、するする読めました。面白かったんだけど、でも何だか切なかった。やっぱり、美人に生まれつくと徳だよなぁ。