読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

えどさがし 畠中恵著 新潮文庫 2014年

 『しゃばけ』外伝。

五百年の判じ絵
 いつの間にやら「佐助」と名乗っていた犬神。自分をこの世に生み出してくれた弘法大師も亡くなり、何百年もあちこち旅を続けていた佐助は、三島宿でどうやら自分宛らしい判じ絵が、茶屋に貼り出されているのを見つける。誰が何の目的で佐助と連絡を取りたがっているのか。思い出せないまま、佐助は化け狐と共に江戸に向かって旅をすることになる。

太郎君、東へ
 利根川こと坂東太郎がこの頃荒れている。利根川を縄張りにしている河童たちには有難い話ではない。河童たちの大親分 禰々子が尋ねてみると、どうやら人間が利根川の流れを変えようとしていて、それが気に入らないらしい。でも人間には人間の都合があるようで…。

たちまちづき
 広徳寺の高僧・寛朝の元に、口入屋のおかみお千が飛び込んで来た。旦那のあまりの頼りなさに、旦那にはおなごの妖が取り憑いているとしか思えない、それを祓ってほしい、と無茶を言う。そのうち、旦那が夜道で襲われる、という事件が起きた。療養中の旦那に代わって店を仕切ったおかみが犯したしくじりを、旦那は見事に収束させる。

親分のおかみさん
 日限りの親分のおかみさんは病気がちで、今日も寝込んだまま。そんな親分の家に、赤ちゃんが捨てられていた。大店の店先に赤子を置き去りにしてそれを切っ掛けに押込み強盗が入る、という盗賊団の噂まで流れて来る中、おかみさんは赤ちゃんの引き取り手を捜して奔走する。

えどさがし
 江戸から東京に変わって20余年、仁吉は若だんなの生まれ変わりを捜していた。新聞に載った奇妙な尋ね人の投書に若だんなの姿を重ねて、仁吉は新聞社を訪れる。その仁吉の目の前で、投書係の記者がピストルで撃たれた。怪しげな警官と共に、仁吉は気乗りしないまま真相に迫ることになる。…


 畠中さん、相変わらず「人を試す」話好きだなぁ。欲望のまま「あれが食べたい、これも食べたい」と買い食いする化け狐のお代を肩代わりすることが、度量の広さを測ることに果たしてなるんだろうか、疑問を抱きつつ。
 『えどさがし』は畠中さんの別のシリーズと重なるような舞台設定でしたね。洋菓子屋さんや新聞記者や警察官、見覚えが何となくあるような人達がちらほら登場。おぎんさんは目当ての人とめぐり合うのに五百年以上かかったのに、若だんなは随分早く生まれ変わりましたね。仁吉はおぎんの庭に帰るより、若だんなとの暮らしを選んだ訳だ。でもこのやり方をしたら、シリーズいつまでたっても終わらないよなぁ。時代を変えてずっと続けて行けるよなぁ、とちょっと意地悪いことを考えてしまいました。いや、妖たちが若だんなと巡り会えそうなのはいよかったんですけどね。今生も、妖たちにお菓子をたんと御馳走できるくらいお金持ちの家に生まれてますように。…おぎんさんがついてるから大丈夫か(笑)。