読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

きたきた捕物帳 宮部みゆき著 PHP研究所 2020年

 連作短編集。

 第一話 ふぐと福笑い
 深川元町の岡っ引き、文庫屋の千吉親分がふぐに中毒って死んだ。享年46、文庫屋の方は一の兄ぃ万作が引き受けるとして、十手稼業は弟子の誰にも継がせない、と生前宣言していたらしい。千吉親分の一番の下っ端 北一は、糊口をしのぐ為万作の下で文庫屋の振り売りを続けることになる。だが、変わらず細かいいざこざは起きて、何故か北一の元に相談事は持ち込まれてくる。とある材木屋に伝わる「呪いの福笑い」について聞いた北一は、ついつい千吉親分のおかみさん 松葉にその話をした。すると、おかみさんはその福笑いを完成させてみせる、という。おかみさんは盲目だった。 

 第二話 双六神隠
 手習所に通う子供 松吉がいなくなったらしい。仲良しの仙太郎と丸助は、拾ったへんてこな双六で遊んだせいだ、と騒いできかない。松吉の駒は「かみかくし」の書き込みに止まったと言う。やがて松吉は帰って来たが、入れ替わるように今度は仙太郎が行方不明になってしまった。仙太郎は「えんまのちょう」に止まったらしい。貧しい家の長男坊 松吉と、裕福な商家の跡取り仙太郎、共に賢い二人の子供の裏に、北一は大人の影を見る。

 第三話 だんまり用心棒
 菓子屋の出来の悪い次男坊が、糸屋のおとなしい娘に手を出した一件を差配人の富勘が仲裁し、北一はそれに顔を出した五日後。新開地の屋敷の床下で死体が見つかった。年月が経ってすっかり骸骨になってしまった遺体を片付ける羽目になった北一。おかみさんの助言も受けて、ひいひい言いながらやり遂げて、事件性はどうやらないと突き止めた。亡骸と一緒に出てきたのが天狗の顔の根付けだったのだが、それとそっくりな彫りものをしている男が、湯屋の釜焚きとして働いていると言う。行き倒れだったのを湯屋の老夫婦に拾われた男は、喜多次名付けられていた。喜多次は死体は自分には関係ないと言いながら、富勘が攫われた、と言う一大事の折、北一に援助を申し出る。

 第四話 冥土の花嫁
 味噌問屋いわい屋の跡取り万太郎が、再婚することになった。北一が引き出物の文庫を誂えた式当日、一人の女が現れる。女は万太郎の前の妻の生まれ変わりだと名乗り、親共々いわい屋に乗り込んで来た。それを信じる者と疑う者に分かれて、やがて人死にまで出てしまう。おかみさんは自分の推測を語り、北一は事がおさまるよう一計を案じて喜多次に段取りを依頼する。…

 新シリーズ…になるのかな。
 面白かったです。宮部作品にハズレなし。
 「手首の上の二本線の刺青」が何を現すのか、今の若い子わからないだろうなぁ、としみじみ思いました。時代劇減ってますしね~。勿論さすが宮部さん、「罰を受けたしるし」「凶状持ち」とするりと改めて説明するんですが。本当、読み易い。
 女性の探偵、ってのは珍しい気がしましたが、そうでもないかな。おかみさん、かっこいいです。おかみさんや北一が語る思い出の千吉親分も。
 全体的に哀しみの色合いが掛かってるのは何なんだろうなぁ。でもその分、北一頑張れ、と応援してしまう。文庫稼業も独り立ちできそうな雰囲気ですし、おかみさんは親分さんの後釜に育てる気満々なようですし。ただ、それ北一にとって幸せかなぁ、優しすぎる子だから向かない、と親分さんには判断されてたみたいだけど。それを補うのが喜多次なんでしょうね。覚えておかないといけない人が色々いそうです、欅屋敷の若主人 椿山勝元とか留守番役の青海新兵衛とか。
 『初ものがたり』の屋台の主人の正体も、一応明かされました。もう一人の喜多さんの大伯父さんだったようで、いずれどこの国許で、どういう経緯で江戸に来たのか、ってのも語られるんでしょうね。楽しみです。