読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

15秒のターン 紅玉いづき著 メディアワークス文庫 2022年

 短編集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 15秒のターン
 「梶くんとは別れようと思う」――平凡でどこにでもいる男の子、そしてちょっとないくらい怒りっぽいお人好しな梶くん。告白して付き合い始めたけど、梶くんの生徒会の仕事が忙しすぎて、つきあってるっぽいことは何一つしていない。別れを告げようと学園祭の日に呼び出したが、もう2時間も遅刻している。やっと会えてもお互い黙りこくったまま、でも…。

 2Bの黒髪
 受験に失敗した仁沢須和子は、予備校に通いながら、現実逃避するようにブログに漫画を上げている。一向に成績は上がらないままなのに、夜中にスキャナーに置き忘れた原稿を母親に見られてしまった。12月、須和子は最後の一話を描き上げて ブログを閉じた。

 戦場にも朝が来る
 マジックミラーの内側で、制服を着て過ごすバイトで稼いだ金を、あめめはソシャゲにつぎ込んでいる。チョコはゲームに強くて、でも課金なしには一位は無理だって言うから、チョコに一番になってほしくて。二人でぬくぬくと暮らしていたのに、ある日、チョコはお兄さんに連れ去られてしまった。「母さんの病気が再発した」とかで。

 この列車は楽園ゆき
 鳴沢茜子は高根文明が、合唱コンクールの練習で泣いているのを見た。ちょっとしたことで感動する癖のある高根くん、学校での人付き合いに疲れていた茜子は、ひょんなことから彼と話をするようになる。ラーメンを食べに行ったり、パンケーキを食べに並んだり。でもつきあうとかそういうのじゃなくて、さり気なく気遣ってくれる彼が茜子に言ったのは「自分をあんまりいい加減に扱わない方がいいと思う」という言葉。数年後、東京に出た茜子が結婚した相手に裏切られ、幼子を連れて戻って来た時にも。

 15年目の遠回り
 ひばりは喫茶店でマスターに愚痴を言っている。可愛い妹のほたるに恋人ができた、一緒の大学に受かったらしい。ひばり自身の恋を訊かれ、ひばりは塾の先生を思い出す。こっそりコーヒーを淹れてくれた先生のことを。…

 紅玉さんの作品を読むのは久しぶりだな、と思いながら手に取りました。
 そうそう、こういう胸に迫る切ない話を書く人だった。『2Bの~』や『戦場にも~』は、このままじゃいけないと心のどこかで思っているのに、心地よさというか自堕落というかにずるずると引っ張られる。逃げではなく大切なものだ、と分かってるのにね、それならそう理解してもらえるよう行動すればいいんだけど、そこらへんがまだ追いつかない。
 『この列車は~』なんかは、いいじゃん、友情で、って思っちゃったけどなぁ。でも本人たちはそれで支えあっていても、周囲にはその関係は理解しにくいだろうなぁ。
 最終的にはどれも爽やかな幕切れで、読後感よかったです。