読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

神前酔狂宴 古谷田奈月著 河出書房新社 2019年

神社の結婚披露宴会場で働く浜野、梶、倉地―配膳スタッフとして日々披露宴の「茶番」を演じるうちに、神社の祀る神が明治日本の軍神であることを知り…。

結婚、家族、日本という壮大な茶番を切り裂く圧巻の衝撃作!      (帯文より)

 

 浜野は高堂神社に併設された高堂会館で、派遣スタッフとして働いている。仕事内容は披露宴の配膳係、松本から上京してきてシナリオスクールに通いながらのバイトだが、脚本を書いているのは余計なことに意識を飛ばしてしまう癖を整理するためだけで、それで食っていくつもりはない。同期のバイト仲間は梶、やんちゃして心配かけた祖母へせめてもの安心材料にと、お堅い神社を選んだという。

 ふいに披露宴の虚構っぷりに気付いた浜野は、その茶番に向き合う面白味にはまってしまった。元々熱血の梶と全力で働くうち、「椚さん」の態度がどうしても目についてくる。

 「椚さん」――高堂神社と対をなす椚神社からのお手伝い。だが派遣スタッフのきびきびした動きに比べたら、縁故採用の彼らの動きはどう見てものろまで非効率的、邪魔でしかない。その現状を嘆く椚のスタッフ倉地は、椚の改革を考え、浜野も梶もそれに協力する。ノウハウやコツを伝授し、研修を受けもってやり、だがその結果、高堂会館は半ば椚に乗っ取られる形になった。何しろ椚の考えは奉職、時給幾らの高堂スタッフとは根本的に気構えが違う。コストを考えると当たり前のことだった。

 浜野は上級スタッフとして生き残っていた。「俺の新郎」に仕えることで自己に魔法をかけ、満足感を得ていた。高堂の宮司は新しいもの好きで、新郎新婦にウケのいい浜野を高く評価した。やがて、高堂は同性婚の神前式、という新機軸を打ち出す。神道での価値観に疑問を投げかけるその形に周囲がざわつき、いよいよ椚が高堂全吸収を決意した頃、一人の新婦が現れた。彼女は「自分の本心と連れ添っていきたい」と語る。…

 

 古谷田さん、書きたいことがいっぱいある人なんだなぁ。で、いちいちこちらの心に引っかかるテーマなんだよなぁ(苦笑;)。

 面白かったです。登場人物一杯で、なかなか掴めなかったりしたけれど、それも名字だけの表記なので男女差もなかなか分からなかったけど、でもこれはわざとなんだろうなぁ。神道では男性優位の考え方、なのに披露宴は、実質、新婦が満足行くように動く。同性婚神道でも認められない、ってのはちょっとはっとしましたね、そうか、元々国生み神話だもんなぁ。不妊治療の医療機器がイスラエルからの輸入品、って聞いた時の納得感を思い出しました。あそこの価値観も、産めよ増やせよ地に満ちよですもんね。

 やっぱり目が離せない作家さんです。