読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

たましくる イタコ千歳のあやかし事件帖  堀川アサコ著 新潮社 2009年

 堀川アサコ、デビュー二作目。
 昭和の初め、弘前を舞台にした連作短編集。

 第一話 魂来る(たましくる)
 幸代の双子の姉・雪子が死んだ。借家の二階、一緒に暮らしていた男を刺し殺し、その血を使って襖紙に遺書めいた文句を書き殴ってから、自分も首を吊った。
 かつて娼妓として14から客を取らされていた幸代は人間を、ことに男を信じることはできなくなっていた。残された雪子の娘・安子ともども一緒に暮らそう、と言ってくれた男を振って、幸代は安子の父親・大柳新志のいる弘前へ向かう。後ろめたいながらも安子を大柳家に押しつけて東京に帰るつもりだった。
 地元の旧家・大柳家の次男坊・新志は幸代と別れて以来、何度も入水自殺未遂を繰り返し、今は座敷牢に閉じ込められている。巫女(いたこ)になった盲目の末の妹・千歳は、何故か幸代に、こちらで暮らさないかと話しかけて来る。千歳によると、雪子は幸代に憑いていて、話しかけているらしい。
 
 第二話 ウブメ
 三月、幸代は弘前に来て、安子と千歳と暮らし始めた。目の見えない千歳の代わりに色々面倒を見る日々。
 千歳の幼馴染み宮田須々子がオペラ歌手となって凱旋公演することになった。千歳の従兄・高雄と音楽会に行った幸代は、そこで堕胎専門の産婆・阿部タ子と出会う。数日後、タ子の絞殺死体が見つかる。犯人として名乗り出たのは、貧しさを理由に生まれた我が子をタ子に間引きされた丹野リツだった。だがリツはお産以降、寝たきりで犯行現場に行くことなどできない筈だった。
 
 第三話 インソムニア
 四月末。千歳を訪ねて来た男は、自分は弘前公園に、ある日いきなり湧いて出たと言う。自分が何者なのか、何処に住んでいたのかも分からないと言う男は木箱を持っており、中を開けてみると入れ替わりのように男の姿も消えてしまった。箱の中は襤褸布が敷かれたきり。
 同じ頃、ある土地の建物が、いくら建て替えても火事にあって焼失してしまうとの相談が来る。その土地自体が呪われているのではないか、と尋ねる地主。そこに最初に建っていたのは「インソムニア」と言う名の遊郭だった。ヒモと娼妓の仲に嫉妬した女将が放火したのが始まりらしい。

 *押し入れの中
 千歳は視力が弱かった昔から、真っ暗闇の中、誰かが助けを求めて来る夢を見ると言う。

 第四話 紅蓮
 大柳新志は元々、女衒の娘・富樫蝶子と恋仲だった。蝶子はある日父親の暴行を受け、そのまま行方不明になったらしい。新志はその後、蝶子とそっくりな雪子と恋に落ちて安子が生まれ、今また幸代に指輪を贈る。
 十年経った今、蝶子の婚約者だった大下孝実が殺された。蝶子失踪と同じ日に殺された北風外記の殺害犯も獄中で死んだと言う。千歳はあの日、蝶子は助けを求めて北風外記とその妻・弥生の元に来たのではないかと推測する。…

 デビュー作より面白かったんじゃないかしら。
 昭和初期の不思議で隠微で、怪奇も混じったような出来事。イタコである千歳が、案外理詰めで物を考えるのも面白いし。でも、推理小説と言うには少々無理があるかもしれませんが。
 千歳たちが使う津軽弁が何だか可愛い。「方言を使う女の子が可愛い」って言う男の人の気持ちが少し分かる気がしました。
 ただ、この作家さんの文章、私にはちょっと分かりにくい; 「え、何時の間にこの人ここにきてたの?」「何でこんな行動取ってるの?」と前の文章を読みなおしたことが何回かありました。読み返すとちゃんと書いてあるのに、何故か読み飛ばしてるんですよね。これも相性かなぁ。ラスト近辺の緊迫したやり取りなんか、本当に幸代の動きがつかめなくてですね; 立ってるのか座ってるのか倒れてるのか、まぁ幸代自身と蝶子が重なってる面もあったからなんでしょうけど; これは編集さんの問題でもあるんじゃないか、とちょっと思ってしまいました。
 あと、副題と装丁も問題ありだなぁ。表紙イラストはちょっと違うと思うし、このサブタイトルではコメディと取られても仕方ないと思うんですけどねぇ;;