読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

わたしの少女マンガ史 別マから花ゆめ、LaLaへ 小長井信昌著 西田書店 2011年

 集英社別冊マーガレット』から白泉社の立ち上げ、『花とゆめ』や『LaLa』の創刊に尽力した編集者の回想録。

 著者は、いわゆる『花とゆめ』の黄金期を作った編集長。見出したと言うか担当した漫画家さんの名前が並んでいるのですが、まぁ錚々たる面々、美内すずえにはじまって和田慎二魔夜峰央成田美名子三原順山岸涼子坂田靖子大島弓子川原泉etc.etc.
 各漫画家さんとの思い出よりも、どういう方針でマンガ雑誌を作って行ったか、少女マンガ家にどう接して行ったかというノウハウ本の面もある感じ。今のマンガや編集者に対しての苦言めいたものもありましたね(笑)。タツノコプロの社長が元々マンガ描いてた、ってのは初めて知りました。
 以前読んだ少年ジャンプの元編集長・西村繁男氏の『さらば、わが青春の「少年ジャンプ」』に比べて、個人情報(?)が圧倒的に少ないなぁ、とちらっと思いました。それが少女まんがの品性なのかも、とも思ったり。
 少年マガジン元編集長・宮原照夫氏の『実録!少年マガジン編集奮闘記』で、少年サンデーについてほとんど触れていなかったのが不思議だったのですが、今回の本でちょっと納得しました。何でもサンデーは眼中になかったそうで。…『うる星やつら』や『タッチ』全盛期も? 『名探偵コナン』のヒットも?? 私は元々サンデーっ子なので、何だか妙な感じでした。
 読み切り主体で、新人を育てて、創作のヒントを一緒に考えて。でも原作付きはあまり少女マンガには向かない、あくまで作家の個性、感性を大事にする。三浦しをんさんが小説の中で似たようなことを書いてなかったっけ。もししをんさん出版社に就職してたら、きっと凄い編集さんになったんだろうなぁ。
 読み切り主体、という記述にはそうそう、と思いましたね~。私は清水令子さんの作品は、短編の方が好きでしたもの。でも以前『輝夜姫』ファンの友人に、「晶が奇麗なことは分かったから、あんなに何ページも要らないと思う」と言ったら「あれは要るの!」と怒られましたが(苦笑;)。美内すずえさんの初期の短編は本当に面白いんだ、とこれは別の友人に、力説されたこともありましたっけ。私は毎年、まんが情報雑誌『ぱふ』で選ばれる年間短編賞を楽しみにしていたのですが、何時の間にやら短編といいながら、長編のサイドストーリー的な作品が多くなってしまったのは何だか残念。
 マンガを描くことをやめてしまった作家さんに対しての「私についてきてくれるならば、その人に合ういいテーマは見つけられたのに」という言葉にはちょっとほろりとしました。優しい人だなぁ。こりゃ沢山の漫画家さんが、ついて行こうと思う筈だわ。
 自分が回想録を書くことに対し、「どんな人でも結局成功したところは自慢し、失敗したところは言い訳になってしまう」。何だかちょっと笑ってしまいました。
 黄金期、と最初に書いたものの、それは私個人の感想であって、黄金期は読者それぞれのものである筈。私はどうしても『ガラスの仮面』があって、『ぼくの地球を守って』や『動物のお医者さん』、『ここはグリーンウッド』が連載されていた頃、川原泉さんが短編を次々描いていた頃を思い浮かべるけど、今の読者は今の『花とゆめ』や『LaLa』を夢中になって読んでいる筈。いつまでも面白い漫画が読みたいなぁ、と思いつつ。…でも新しいものに手を出す気力がなくなってるのも事実なんですよね~。何しろ裾野が広がってるからなぁ。