読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

半熟作家と“文学少女”な編集者(ミューズ) 野村美月著 ファミ通文庫 2011年

 “文学少女”シリーズ最終巻。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 半熟作家と“文学少女”な編集者(ミューズ)
 俺・雀宮快斗は売れっ子高校生作家。『ハードボイルド高校生・業平涼人』シリーズを刊行し、ベストセラー街道をかっ飛ばしている。
 今度の担当編集は天野遠子、今までの頭ごなしに無知呼ばわりしてくる歴代担当とは違って快斗の読書履歴まで的中させてくる、物腰柔らかな清楚系美人。すっかり恋心を抱いてしまった快斗としては、ふんわりと、でも何時の間にやら原稿の修正を指示する様子に振り回されっぱなし。
 そんな時、快斗に脅迫状じみたファンレターが届く。これからの展開を言い当てる内容に、天野遠子への疑惑を抱く。こんなことを知っているのは、編集者しかいないんじゃないか? 果たして差出人は誰か。

 半熟作家とスキャンダラスな淑女(スカーレット)
 女子大生作家・早川緋砂は『スカーレットシリーズ』という恋愛小説がヒットしている売れっ子作家。作家本人の美貌も注目されていてメディアへの露出も多く、その上天野遠子が担当とあって雀宮快斗には気に入らないことだらけ。それは相手も同じらしく、何だかんだで短編小説の競作企画で勝負をすることに。
 読者が望む展開を盛り込んだ快斗渾身の一作を、早川の経済小説は軽く越えた。喜ぶ早川に、担当編集者替えが告げられる。

 半熟作家と空騒ぎの学友達(ハムレット
 久しぶりに登校した雀宮快斗を迎えたのは、球技大会への参加。運動音痴の快斗にはスポーツに関して嫌な思い出しかないのに、クラスメイトの鳴見宝は卓球の練習に快斗を誘い出す。やがて始まる快斗への嫌がらせ。犯人は誰か、遠子は張り切って「想像する」と言う。

 半熟作家とページを捲る“文学少女ディアーズ)”
 遠子が秋に結婚する。
 ショックを受けた快斗は原稿も手に付かず伊豆へ傷心旅行、だが遠子は容赦なく追いかけて来て、原稿を書け、と言う。失恋したなら、失恋したことを書け、と。…

 
 久々、文学少女シリーズを読んで思いました。…うん、面白かった。
 何なんだろう、このシリーズ、個人的にちょっと停滞していたような気がしてたのですが、最終巻ですっきりした感じ。そうか、こういう道化た役割の主人公が語り部の方が、遠子先輩は引き立ったんだな。
 遠子先輩は作家の適性や希望を汲み取って育てる、優秀な編集者になったようです。遠子先輩以外の編集さんがちょっと無能ではないかい、とちょっと疑問にも思いつつ。でも作家の意図がなかなか通らない、ってのはあることなんだろうなぁ、と氷室冴子さんのエッセイとか思い出したり。漫画ですが、『バクマン』でも担当さんとの相性について描かれたシーンもありましたもんねぇ。
 最後にちょっと出てきた日坂さんも嬉しかったです。
 こういう、ほわんとした読後感はいいですねぇ。