読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ビブリア古書堂の事件手帖5~栞子さんと繋がりの時~ 三上延著 メディアワークス文庫 2014年

 『ビブリア』シリーズ5作目。
 ネタばれになってるかも、すみません;

第一話 『彷書月刊』(弘隆社・彷徨社)
 古書屋仲間の間で、噂になっている奇妙な客がいる。年配の女性が『彷書月刊』を4、50冊づつ持ち込んでは、1~2週間後にはまた引き取りに来るんだとか。果たして、『ビブリア古書堂』にもその客がやってきた。特徴ある書き込みのあるその雑誌を、志田が連れてきた男性客が目に留める。

断章Ⅰ 小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫
 志田の正体に栞子が気付く掌編。 

 栞子の友人・滝野リュウの紹介で、栞子たちは真壁菜名子と会った。二人の後輩に当たる彼女は、父親の『ブラック・ジャック』の単行本について相談があるという。父親に屈託のある弟が、父親のコレクションのうち、第4巻を黙って持ちだしてしまったとのこと。何でも4巻は全部で5冊もあったのだとか。何故4巻だけそんなにも冊数があったのか、駆け落ち同然で一緒になった母親との関係があるらしい、と見抜く栞子。だが母親が亡くなった際にも、4巻は弟に遺恨を引き起こしていた。

断章Ⅱ 小沼丹『黒いハンカチ』(創元推理文庫
 栞子は滝野リュウが智恵子と通じていることを察し、母親への連絡を頼む。

第三話 寺山修司『われに五月を』(作品社)
 栞子の幼馴染み・門野澄夫から連絡が来た。門野は栞子の母親・篠川智恵子とも面識がある古くからの知り合いで、栞子のためを思ってとはいえ、盗品を『ビブリア古書堂』に売りに来たこともある札付きの人物。年の離れた兄・勝己から、遺産として寺山修司の『われに五月を』の初版本を譲られたのだが、誰も信じてくれないと言う。元々その本は、智恵子を通じて勝己の元に渡った物だった。古書の間に挟まれていた紙を見て、栞子は言葉を失う。そこには寺山修司直筆の鉛筆書きの草稿が、消しゴムで消された跡があった。上に描かれていた色鉛筆画は、幼い頃の澄夫の絵だと言う。

断章Ⅲ 木津豊太郎『詩集 普通の鶏』(書肆季節社)
 いよいよ栞子の前に現れた智恵子。自分たちが持つ古書に対する衝動について、栞子を説得しようとする。

プロローグ エピローグ リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』(新潮文庫
 五浦大輔に対する栞子の答え。…


 続けて借りられましたよ、嬉しい限りです。追い着いちゃった、とも言えるんですが(苦笑;)
 今回、圧倒されたのは手塚治虫
鉄腕アトム』は勿論、『火の鳥』(『望郷編』は最初に読んだ朝日ソノラマ版の方が好き)や
海のトリトン』(私が持ってる少年サンデーコミックス版は、講談社の全集と内容が違う所があります)、
リボンの騎士(なかよし版)』(多分頁数の関係なんでしょうが、講談社の全集は話のつじつまがあわない所があって、幼心に不思議でした)等も描き直しがあるのは知ってたんですが、それがされているのは古い作品だからだと思っていました。
ブラック・ジャック』のような比較的近年の作品までそんなことをしていたとは…! 慌ててネットで検索かけたら、「いや、これ読んだことあるよ」という作品もあって、ですからかなり晩年まで取捨選択してたんですね。なんてマニア泣かせのクリエイター…!
 「今後、決定版のような単行本が刊行されれば…」と作中に栞子さんの台詞がありましたが、これは多分、いずれ出るんだろうなぁ。というか、出て欲しいです。いや、多分私は買わないけど(←こらこら;)、「読もうと思えば読める」状態にしてほしいもんなぁ。
 寺山修司の消された草稿のエピソードには、「何てことを…」と一瞬私も息を飲んでしまいました。…いや、おはなしだから、おはなし(苦笑;)。しかし、いかに智恵子さんが胡乱な人だったからって、その腹いせをそういう形でしちゃいけないと思うわ、勿体ない;;(←いやだから、おはなしだから・苦笑;)
 志田の経歴も分かって、本当に結末に近づいてるんですね。
 大輔の「いや、俺も一緒に行けばいいじゃないですか」の台詞には脱帽。…世の中変わったよね、ふらふら出歩く男を女は家で待つ、ってのが古い価値観だとするならば、それをそっくり入れ替えたのが智恵子さん世代で、同じ方向を向くのが栞子さん世代なんだ。
 そういえば私、智恵子さんのビジュアルがドラマでのショートカットの安田成美さんで浮かんで仕方ありませんでした。これは栞子さんそっくりの外見(ストレートロングで細身の美女)の50代女性、ってのがなかなか想像できなくて; あの髪型の50代、ってのは痛々しく見える方が多いような気がしてですね;;(←暴言。自戒も込めて)。
 とりあえず一巻目の犯人 田中敏雄再登場。この危険を予知していたかのような智恵子さんはどう動くんでしょうか。
 次巻に続きます。