読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

いまさら翼といわれても  米澤穂信著 角川書店 2016年

古典部〉シリーズ6冊目。

 箱の中の欠落
 6月の夜、折木奉太郎福部里志に呼び出された。里志は、生徒会選挙で起きた不正投票の真相を解き明かして欲しいという。根拠もなく疑われている一年生を救いたいという里志の言葉に、奉太郎は状況を尋ねる。40人分ほど増えていた票は、どんな方法で紛れ込んだのか。

 鏡には映らない
 伊原摩耶花が奉太郎にキツく当たるようになったきっかけは、中学の卒業制作だった。鏡フレームの一部を担当しながら、まるっきり飾りを無視して彫り上げてきたから。今になってみると奉太郎だけが責められる筋合いではないし、そもそも平穏無事を願う奉太郎らしくない行動。摩耶花は、隠された意味があったのではと疑い始める。

 連峰は晴れているか
 中学の英語教師は、ヘリコプターが好きだった。授業中にそう言ったことがある。里志曰く、雷に三度も撃たれたことがあるとも言っていたとか。また、そんなにヘリ好きだったとも思えないと。気になった奉太郎は、市立図書館で古い新聞を調べることに。奉太郎は何が気になったのかが気になった千反田えると共に。

 わたしたちの伝説の一冊
 漫研が二派に分かれている。「読む派」と「描く派」との溝は、修復不可能なほど。描く派の浅沼に巻き込まれ、摩耶花は部誌に漫画を描くよう依頼された。既成事実を作ってしまおうという意図は気になりながらも承諾する摩耶花。だがその矢先、ネームを描いたノートが盗まれてしまう。犯人は誰か、そんなことをして得する人間は。

 長い休日
 日曜日の晴れ間、奉太郎は何となく散歩に出て、荒楠神社を訪ねて、何故か千反田えると境内の掃除をすることに。えるは奉太郎のモットーについて尋ね、奉太郎はそれを決意した小学生時のエピソードを話す。便利に使われて、ばかにされるのはごめんだ、と。

 いまさら翼といわれても
 夏休み初日、市が主催する合唱祭で千反田えるが独唱するらしい。だが当日、えるは行方をくらませてしまう。バスで途中まで一緒だったという老婦人は「一時間もすれば来るだろう」と楽観視している様子、電話で呼び出されて奉太郎は、その態度に疑問を抱く。…

 何なんだろう、このほろ苦さは。これまでもこんなに哀愁漂ってたっけ、妙に心が痛い。
 『連峰は晴れているか』はアニメになってましたね、奥付みるとこれだけ書かれた年が突出して早いし、…でもアニメでは山仲間助かってなかったっけ? 記憶違いかな。
 個人的に染み入ったのは『長い休日』でした。…いいように使われる、ねぎらわれることもなく、ってのはある年齢以上の女性なら多少なりとも経験したことがあるんじゃないかな。少し前に心を病まず働くコツとして「無能なふりをする」という意見を見かけて、確かに、と密かに同意したことを思い出しました。つけこまれてあれもこれもと作業を押し付けられて、いや、本来誰の仕事ですか、好意でやってあげてるだけなんですけど??って眉を顰めたことは私でもあるので(苦笑;)。
 奉太郎の心は回復し始めたようで何より。でも今度はえるが途方に暮れてはじめたようですね。…でもこれ、続き出るのいつになるんだろう;
 そうそう、奉太郎の読書感想文、メロスに刺客を差し向けた人物に関する考察には目からウロコ!でした。そんな見方があるとは、というか中一でそれ考え付くって、本当、奉太郎くんは根っから奉太郎くんだわ!(笑)