読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

この世界の片隅に 上・中・下巻 こうの史代著 双葉社

戦中の広島県の軍都、呉を舞台にした家族ドラマ。主人公、すずは広島市から呉へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑う。しかし、一日一日を確かに健気に生きていく…。

すずも北條家に嫁ぎあくせくしてる間に、ようやく呉の街にも馴染んできた。リンさんという友達もできた。夫婦ゲンカもする。しかし戦況は厳しくなり、配給も乏しく日々の生活に陰りが…。そして昭和20年3月、ついに呉の街にも大規模な空襲が! 戦争という容赦のない暗雲の中、すずは、ただひたすら日々を誠実に生きていく。

昭和の戦中。広島市から軍都呉市に嫁いだすずは、不器用ながら北條家に徐々に溶け込み日々を過ごす。やがて戦争の暗雲が周囲を色濃く染めていく。大空襲、原爆投下、終戦。歴史の酷い歯車が一人の女性の小さな世界をゆがませていく。そして…。読む者の心を揺さぶる最終巻! (紹介文より)

 おお、すずさんの台詞がのんさんの声で聞こえる…!
 アニメ映画の方はTVで放送された分を見ていました。映画がほぼ原作通りだったので驚いた。「隣組」の歌とエピソードが重なって紹介されるくだりとか、アニメならではの演出かと思ってました。
 大幅に削られてたのがリンさんとのエピソードですね。後から監督さんが追加した分を作ったのもむべなるかな、あのくだりがあるかないかで、周作さんがすずさんを幼馴染みの水兵さんに差し出そうとしたエピソードの色合いがちょっと変わって来る気がするものなぁ。リンさんはどこですずさんが恋敵(…というのかしら)と気付いたのか、すずさんと夫の名前を聞いた時なんだろうか。で、その後でもすずさん励ましたんだよなぁ。というか、この時の会話は本当に秀逸で、どうも深刻になりきらない展開が心地いい。アトトリについて「出来がええとも限らんが」「予備に何人か産むんじゃろう」という会話には思わず吹き出しました。
 私の年代は、というか私自身がですが、小さい頃からいわゆる戦争文学を必ず課題図書で読まされてきて、そういうものに少々食傷気味な所がありまして。この頃はそう言いながら避けて通ってはいけないものなんだろうなとは思いつつ、やはり読んで楽しいものではないので手が出し辛くてですね。そんな中でのこの作品、市井の穏やかな女性、小姑とのいざこざや夫の元カノで悩んでいた愛すべき女性が、徐々に日常を戦争に侵略されていくさまを、あくまで軽やかにユーモラスに描いているのは貴重だなぁ、としみじみ思いました。
 こういうテーマの作品に、こういう感想を言うのはどうかと思いつつ。
 面白かったです。