読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

犬はどこだ 米澤穂信著 東京創元社 2005年

 ネタばれあります、すみません;

 何か自営業を始めようと決めたとき、最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。何しろアトピー性皮膚炎がのっぴきならなくなって、折角就職した銀行を辞めなくてはならなかったくらいなのだ。水仕事などもってのほか。
 故郷に戻って、皮膚炎は治まった。そこで調査事務所を開いた。この事務所〈紺屋S&R〉が想定している業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。
 それなのに、開業するや否や舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。高校の後輩ハンペーも雇って欲しいと押しかけて来た。学生時代からの友人 大南が勝手にあちこちに宣伝紹介しているらしい。仕方なく古文書解読をハンペーに押し付け、自分は失踪人探しを担当した。失踪者 佐久良桐子は住民票を田舎に戻すほど冷静に移住を計画しており、恋人である会社の同僚にもいずれ戻って働きたいと言っていたとか。
 失踪ではないのでそっとしておいてやってほしいという母親、心配する祖父母。チャット友達の〈GEN〉の助けを借りて、紺屋は佐久良桐子がネットストーカーに付きまとわれていたことを知る。桐子のブログ内容にいちゃもんをつけた挙句、ちょっとした身辺雑文から住所を確定、さらに実家まで突き止められていたらしい。
 一方、古文書解読も順調に成果を上げていた。市井の郷土史研究家が自費出版していた著作に、そっくり現代語訳が載っていることが分かり、ハンペーは地元の図書館で予約図書の手続きをする。そこに一人の若者が近付いて来た。卒論の為その本を読みたいのだが、住民じゃないので借りられない、ぜひ自分にも読ませてほしい。何の気なく、ハンペーは了承した。その本は、かつて桐子が高校の自由研究の資料として用い、感銘を受けた本だった。
 調査で浮かび上がってくる冷静で用意周到な桐子象と、ストーカーから逃げ回る桐子の象が一致しない。紺屋はその違和感に、一つの可能性を思いつく。もしかして桐子は、ストーカーを誘き出し、自分で決着をつけようとしているのではないか? 紺屋は古文書に載っていた山城跡へ向かう。… (折り返しの紹介文に付け足しました)

 米澤版ハードボイルド。
 出だし、哀愁漂う文章なのに、妙にユーモラスで面白いなぁ、とするする読んで行ったら、何だかとんでもなく不穏な展開に。…いや、桐子さん、自分の道を自分で切り拓く、好きなタイプの女性の筈なんです、筈なんですけど、こう書かれると怖いよう! どことなく『小市民』シリーズの小佐内さんに通じるものが…(苦笑;)。
 キャラクターが、端役に至るまで皆さん魅力的でした。次の作品が出てないのが不思議なくらい。特にチャット友達のGENさん、顔見せてほしいなぁ、正体が知りたい(笑)。
 もし次が出たら読んじゃうなぁ。面白かったです。