読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

魂手形 三島屋変調百物語七之続 宮部みゆき著 角川書店 2021年

 『三島屋変調百物語』シリーズ7冊目。
 ネタばれあります、すみません;

 第一話 火炎太鼓
 美丈夫の侍が語る。
 美丈夫の侍 小新左が十歳の頃。法螺貝が鳴ったある日、兄嫁のよしは「お太鼓に変事があったのでは」と不安顔、果たして神器の火炎太鼓の一つが盗賊に盗まれた挙句、壊れてしまったらしい。盗賊を追って大火傷を負った兄に代わり、小新左がよしと共に藩主に従い、山中に分け入る。沼のぬし様から、火炎太鼓の部品を頂くために。

 第二話 一途の念
 屋台で串団子を売っていた娘 おみよが語る。
 おみよの母 夏が死んだ。お夏は孤児だったが器量よしで、料理屋 松富士の女将に見込まれ、品性と知性を叩きこまれた。仲居として働き、包丁人の伊佐治と恋仲になった。だが伊佐治が病に伏し、板長が闇討ちに会い、女将が倒れ…と松富士は不幸に見舞われる。新たに迎えた女将は松富士を岡場所へと落とし、お夏も客を取ることになる。お夏は四人の子供を産み、そのうち上三人の男の子は伊佐治にそっくりだった。伊佐治が亡くなったことで松富士を追い出されたお夏は、子供たちと長屋暮らしを始める。貧しいながらも親子仲睦まじく、だがそんなお夏の過去を暴き立て、喚き立てる男が現れた。

 第三話 魂手形
 鯔背な老人 吉富が語る。
 吉富は小さい頃から祖母に折檻を受けて来た。他に男を作って逃げた母親に似ていたのが癪に障ったらしい。だが父の後添え お竹が懲らしめて以来、祖母の暴力は止んだ。
 その祖母も亡くなって、吉富が十五の時、家業の木賃宿に風変わりな男が泊まりに来る。貧相な風体なのに声だけやたらといい男 七之助は、女の亡魂を連れていた。水面と名乗る彼女の記憶を取り戻そうと、水面の故郷に連れて行く途中だという。体調を崩した七之助の面倒を見る吉富、吉富も水面の故郷を訪うことにする。故郷の地で、自分の悲惨な死にざまを思い出した水面。吉富はその怨みを、全て自分に引き受けさせてくれと頼む。水面が怨霊にならないように、と。…

 相変わらずの面白さ。するすると読めました。
 爽快、ではどうしてもないんですが。何しろ皆さんの境遇が哀しいものが多くて;
 富次郎まで引きずられて、己の生末を不安に思ったり。これがなかなか痛くてねぇ、どうしたんだ富次郎、呑気が身上だろうに。絵の師匠に当たる花山蟷螂先生が登場、この人はまた関係してくるのかな。自分を認めてくれる人がいる、というのは確かに力になりますね。
 おちかさんが妊娠して喜びに沸く三島屋、でも富次郎の元にはいつかの証人がまた訪ねて来ました。亡魂と同じ目をしているとか、正体が分かって来たような。今後どう関わって来るのか楽しみなような、怖いような。富次郎さん、負けませんように。