読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

妖し 恩田陸/米澤穂信/村山由佳/窪美澄/彩瀬まる/阿部智里/朱川湊人/武川佑/乾ルカ/小池真理子 著 文春文庫 2019年

〈怪異〉をテーマにした短編アンソロジー

 曇天の店|恩田陸
出張で訪れた北陸の古い門前町にて。ふらりと入った和食屋の主人が語る。この地で起こったフェーン現象のこと、この地方では「カワケ」と呼んで「出入口を開けるな」と伝えられていること。

 わたしキャベンディッシュ|米澤穂信
種子のないバナナはクローンで増え、そのかわり病害に弱い。新しいバナナの品種を見つけることが「わたし」の仕事で、宮崎の研究所に勤めている。夫との仲は良好、わたしが働き、夫が家のことを受け持っている。子供は作る気はなかったが幸せだと思っていた、ある女が訪ねてくるまでは。

 ANNIVERSARY|村山由佳
小学二年生の大晦日、「私」さちは「異世界へ飛ぶための秘密の儀式」を行った。結局世界は変わりなく、さちは大人になって愛する人に出会い、息子を授かって、幸せな日々を送っていた。片方の乳房を失ってはしまったが。なのにほおずき市のあの日、さちは過去に戻ってしまう。小学二年生の正月に。

 真珠星スピカ|窪 美澄
死んだ母さんが私の前に現れている。中学生の私はいじめられていて、学校では「こっくりさん」が流行っていた。

 マイ、マイマイ|彩瀬まる
鈴白くんが私から心を移しかけている。後輩のハルヒちゃんからアプローチを掛けられて、そちらに行こうとしている。彼が座っていた場所に落ちていたつるつるした白い石は何なんだろう。それはある日、私の体からも出てきた。

 李果を食む|阿部智里
両親からクズだと決めつけられら俺は、ほぼ祖父母の家で育った。両親お気に入りの弟は、過保護で過干渉に育ち、交通事故で両親が死んだ後もろくろく独り立ちできていない。何とか大学は出たが、就職もせず部屋に引き籠って、何かを育てているようだ。

 フクライ駅から|朱川湊人
中学校以来、ずっと仲良くしていた地元の友人が、精神科の専門病院に入院しているらしい。驚いて連絡を取ると、友人の妹が案内してくれた。すっかり可愛らしく成長していた妹は、友人は「フクライ駅」というルポ風の怪談を作り上げて、それ以来おかしくなってしまったのだという。

 細川相模守清氏討死ノ事|武川 佑
室町幕府執事 細川相模守清氏は、二代目将軍 足利義詮に追放された。身に覚えのない謀反の疑いを掛けられ、清氏は後醍醐天皇の元に走った。彼を主人として慕う孫七郎の元に、天狗が現れる。曰く、深い恨みを抱いて死んだ者は天狗になる、と。清氏もいずれ天狗になるだろう、と。

 かぐわしきひと|乾 ルカ
写真家の兄が死んだ。北海道のとある田舎駅のそばのエゾヤマザクラで首をくくったらしい。妹の翼は兄の遺品整理をしていて、パソコンの中に美しい女性の写真を見つける。

 喪中の客|小池真理子
玄関のブザーが鳴った。訪問者は妹の不倫相手の妻、妹と不倫相手は旅行中に事故死した。妹の忘れ形見の姪っ子と二人だけで暮らす日々だ。お線香を上げたい、という女を、「私」はしぶしぶ家に上げた。…


 恩田さんの名前に惹かれて借りた一冊。
 恩田さんの作品は相変わらず好きですが(旦那さんと奥さんの間の不穏とまでもいかない空気を「カワケ」が増幅と言うか後押しと言うかしそうで)、米澤さんの作品好きだなぁ。米澤さんの短編、面白いなぁ。
 阿部さんの作品は、あれはどちらの見解が正しいんだろうか。多分お兄さんの方なんだろうけど、人格的に問題はありそうで、一人称を信用してはならないですね(苦笑;)。
 〈怪異〉がテーマなだけに後味のいい作品は少なくて、ちょっと読み辛かったかも。これはこちらの心持のせいですね、すみません;