合戦が始まる。敵の名は、借金。
幕末期、ほとんどの藩が財政赤字に喘ぐ中、大野藩も例外ではなかった。
藩主・土井利忠は、様々な藩政改革を断行し、多額の借金を抱える藩財政を立て直そうとする。その執行役として白羽の矢が立てられたのが、若干八十石の内山家の長男である七郎右衛門良休。
四歳年下の殿の人柄と才覚に惚れきった七郎右衛門は、己の生涯を懸けて利忠と向き合い、時には反発しながらも、大野藩の再生に奔走する。
新銅山の発掘、面扶持の断行、特産品の開発とその販売経路の見直し。幕府からの急な普請代の依頼には銅山からの現物支給で代行する。だがいくら利益を上げても、利忠は使い道を新たに見つけて来る。藩校の開設、西洋武器の買い付け、類を見ない大型船の造船……。七郎右衛門は、幾度も窮地に陥りながらも、利忠の期待に応え続ける。
だが、家柄もなく、殿の信頼を一身に集め、旧態依然とした大野藩の改革を続ける七郎右衛門には、見えざる敵の悪意が向けられていた。
そんな中、黒船の襲来により、日本中に激震が走る。
時代は移り変わろうとしていた――。
(出版社紹介文に付け足しました)
畠中さん、初の歴史小説じゃないかな。
読み始め、創作か史実作品か戸惑いました。そしたらどうも歴史小説らしいということが分かりまして。畠中さんの作品は元々金銭感覚おおらかな作品が多いイメージがあってですね、よりにもよってこういう題材??と少々驚きました。
時代としては佐藤賢一著『新徴組』と同じ頃ですよね。こちらも、全然知識のないことだったのでへぇ、こんなことがあったんだ、という感じで読んでましたが。
う~ん、物足りないかな~。何しろ財政を立て直す対策の描写が圧倒的に足りない。「こうした」という方向性は書いてあっても、新しい鉱脈を見つけ出す描写はなかったし、倹約生活もさしたる難なく乗り切っちゃったように見えたし。「特産品の開発」って言葉が何度も出て来るんですが、それが実際何なのか結構後半にならないと出てこないのはちょっとどうよ、と本気で思いましたね(苦笑;)。
のんびり、逼迫感のない筆致は相変わらず。もっと向いてる題材あったんじゃないかなぁ。面白くない訳ではなかったんですが。