螺旋プロジェクト古代篇。
東大寺大仏の開眼供養から四年、仏教政策を推進した帝・聖武天皇の宝算は尽きる。道祖王を皇太子にとの遺詔が残されるも、その言に疑いを持つ者がいた。前左大臣・橘諸兄の命を受けた中臣継麻呂と道鏡は、密かに亡き先帝の真意を探ることに。
橘諸兄は語る。帝は自らの血に藤原の血が入っていることを恥じていたと。
帝の今際の際まで傍に仕えていた円方女王(まとかたのおおきみ)は語る。帝の母 藤原宮子こそ、藤原氏の血が入っているのに皇太子となった我が子の行く末を案じていたことを。
帝の妻 光明子は語る。生まれた時から帝の子、それも男児を生むことを義務付けられた我が身のこと、娘しか生まれず、やがて新たに帝の元に送られてきた姪を援助するしかできなかったこと。
元興寺の僧 栄訓は語る。異国の僧 鑑真への異常なまでの、帝の拘りを。
塩焼王は語る。度重なる遷都が現す帝の不安定さや、帝によって皇太子に定められた弟 道祖王(ふなどおう)が皇統である上で優秀であることと、それ故の排除の危険性について。
藤原氏の勢力を怖れた中臣継麻呂は、光明子の産んだ幼子 基王が呪詛により殺されたと長屋王が処罰された件を思い出し、遺詔探しから抜けると言い、道鏡は、宮子が心を病んで玄昉法師に傾倒したことを、帝は不興に思ったことを語る。
明らかになるのは全き天皇であることの孤独、それが不可能である絶望、他者への厳しさにも跳ね返る矛盾。
やがて、帝の娘 帝位に就いている阿倍が、道祖王の廃嫡を決めた。帝の遺詔を理由ににしての廃太子、遺詔は本当にあったのか。…
(出版社HPの紹介文に付け足しました)
澤田瞳子さんの作品を読むのは初めてです。
このあたりの歴史は全然知識がないので、面白く読みました。螺旋プロジェクトを組み込む必要があったのかなぁ、とちらっと思いつつ。仲裁者の役割とか、今回なくてもいい感じだったしなぁ。
道鏡って、二人の女帝と色々関わって来てたような覚えがあるのですが、澤田さんの頭の中ではそれはどうなってるのかしら。描かれる予定はあるのかなぁ。