読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

四角い光の連なりが 越谷オサム著 新潮社 2019年

短編集。

 やまびこ
東京駅発のやまびこ号で一ノ関駅に迎いながら、「僕」は過去を思い出す。小さな子供のいる家族連れを見て自身の小さい頃や高校での修学旅行を、新卒らしい女の子を見て自分の最初の職場とその挫折、父親との仲違いを、老夫婦を見て再就職と結婚、両親との和解を、そして今を。

 タイガースはとっても強いんだ
甲子園へ、阪神タイガースの応援に行く。タイガース勝利の為にこなさねばならないルーティンはてんこ盛り、しかも今日は気になる女の子中井さんを誘っている。そんな中「おれ」の乗っている電車に、彷徨える外国人老夫婦が乗って来た。彼らは、おそらくこの社内でおれにしか分からないだろうポーランド語で会話している。

 二十歳のおばあちゃん
昔 荒川で運行されていた路面電車の車両が、今は豊橋で走っているらしい。それに乗りたい、という祖母のリクエストに応えて、孫の美羽が一泊二日で連れて行くことに。目ぼしい観光名所もない豊橋に、祖母のお守りだけで行くのは、実は美羽には少々かったるい。一日目、祖母に昔の話を聞いた夜、美羽はある夢を見る。

 名島橋貨物列車クラブ
卒業文集に載せる作文を、原颯太は自分の言葉で書き直している。幼馴染みの塁人と、鉄橋を渡る貨物列車を見る日課のこと、塁人との関わりとそれを通じて仲間になった伊藤さんとのこと、やがて塁人が起こした問題行動のことも。

 海を渡れば
真打の落語家が自身初の独演会で語る、入門当時の思い出。…

 

 列車にまつわる短編集。
 すみません、上からな感想で申し訳ないんですが。
 越谷さん、上手くなったなぁ。
 いつの間にこんな作品書けるようになったのやら。
 連想したのは池上永一著『復活、へび女』(今は『あたしのマブイ見ませんでしたか』に改題)。内容が、というより個人的な思い出ですね。当時、沖縄を舞台にした作品ばかりを書いてらっしゃった池上さん、私は勝手に、大丈夫だろうか、面白いのは確かなんだけど、沖縄以外の作品は書けるんだろうか、と不安視しておりまして(←余計なお世話)。で、『復活、へび女』を読んで、あ、大丈夫だ、と思ったのでしたよ。この人、もっと引き出しある人だ、書き続けられる人だ、って。
 で、今回、この作品を読んで、私は思ったのですよ、ああ、越谷さんもずっと書いていける人だ、って。(←やっぱり上から;)

 面白かったです。