読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

かがやく月の宮 宇月原晴明著 新潮社 2013年

 千年の時を経て、秘匿されていた真の「竹取物語」が、鬼才の筆で今、蘇る。

 かの有名な竹から産まれたという逸話も、五人の公達の尋常ならざる貢物も、すべて竹取翁の仕掛けた罠だった――?
 翁の術中にはまった帝は禁裏を抜け出し、竹取館へ向かう。愛しのかぐや姫と邂逅を果たした帝は、しかし、病に伏してしまった。天照大御神の末裔は一体、何を見たのか。姫が昇天する夜、月が真実を照らし出す。
                                         (出版社紹介文より)


 一人の女御の元に父から贈られた巻物が一巻。誰もが知っている『竹取物語』の、聞いたこともない別に解釈された物語が、そこには綴られていた。
 藤原家に朝廷の権力を掌握されてしまった貴族たちは、自らの意地をかぐや姫への執着に変え、しかし次々と散って行く。やはり権力闘争のため、敬愛していた兄宮と憧れていた姉宮を喪った帝は、かぐや姫の姿に愛しい姉を映し見る。
 唐の女帝からの圧力が掛かる中、かぐや姫の正体に気付き彼女の昇天を見届けた帝は、女帝への手紙をしたためる。かぐや姫は帝の身内に宿っていた。
 女御はこの物語をヒントに、別の物語を書き始める。姫が天に昇らなければいい。…


 映画『かぐや姫の物語』を見たばかりなので、ストーリーも記憶に新しく、ですからかぐや姫の求婚者の描き方も、こんなにも違うものかと面白かったです。
 実在の権力闘争や唐の女帝・則天武后(多分)からの圧力に絡めて、かぐや姫が実在したかのように描きだす。しかもその物語を読んでいる別の人物がいて、という二重構造で、この人物が誰かは予想がつくのですが、でもやっぱり、ここに繋がるのかぁ、というカタルシスがありました。作中話の帝の決断にもすっきりしましたし。
 西方の月の女神を日本神話にまで繋げる力技(と言っていいのかな)はいかにも伝奇小説でした。こういうのは楽しいですねぇ(笑)。