読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ファミリーランド 澤村伊智著 早川書房 2019年

短編集。

 

コンピューターお義母さん

遠く関西にいる義母に、我が家は監視されている。ネットで繋がった状況から、いちいち小言を言ってくる。パート先の愚痴まで把握されるに至って、「わたし」はタブレットを置いて、義母のいる老人ホームを電撃訪問した。そこから関係が変わることを期待して。

 

翼の折れた金魚

妊娠促進剤コキュニアを服用して生まれた子供が世間を席捲している。金髪碧眼がその特徴、例え特異な才能を持っていても、計画出産児でなければ白い目で見られる風潮が蔓延っている。例え教師であろうとも。

 

マリッジ・サバイバー

結婚相談所「エニシ」で相手を見つけて結婚した。両親との仲が上手くいっていなかった自分が選んだのはビジネス婚、同じ価値観の女性と結ばれた筈だった。だが結婚指輪で行動を把握される日常に、次第にストレスが募っていく。

 

サヨナキが飛んだ日

娘がサヨナキに依存している。自律型看護ロボットに。女手一つで育て上げてきた娘が。

 

今夜宇宙船(ふね)の見える丘に

父親が譫妄に襲われるようになった。介護に疲れた「僕」は「ケアフェーズ」に手を出す。より介護し易い形に父親を改造するキットに。それでもいよいよ経済的にも追い詰められ、父親は覚悟を決める代わり、「宇宙船が見たい」と望む。巷では赤い光球が宇宙から飛来していた。

 

愛を語るより左記のとおり執り行おう

葬式の全てが立体映像で執り行われる中、「昔ながらの葬式がしたい」と言う人物が現れた。資料は映像の中にしかない。ドキュメントとして取材を申し込んだ「私」は、依頼者の残り少ない余命の中、息子夫婦と共に念入りな打ち合わせを行う。…

 

 明るい快適な未来、ってのはないのかなぁ、とちょっと遠い目をしてしまう短編集。いや、元々SFってこういうものだったっけ、作者ホラー出身だし(苦笑;)。

 とはいえ、やはり面白かったです。少しずつ未来に向かっていく構造、前作での内容が少し係わってきたり。個人情報だ何だって尊重される昨今、ここまでは行くまいと思う内容もありましたが。『サヨナキ~』で出て来るロボット名が『ニルスの不思議な旅』のガンの名前で、懐かしいなぁ、でも分かる人少ないだろうなぁ、と思ってたら巻末で参考文献として載ってました。ほかにも細かいくすぐりがあるのがちょっと嬉しい。登場人物が大体キラキラネームなのも、芸の細かさなんでしょうね。

 個人的に、きっと地元の人なんだろうな、と思いました。阪急沿線が妙に頻発するし、題名も「ファミリーランド」だし。…誰が分かるんだ(笑)。