読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

学校では教えてくれない世界史の授業 佐藤賢一著 PHP研究所 2018年

 世界史は「西世界・東世界・イスラム世界」の三世界の覇権志向で動いてきた。
 世界史の情報量は膨大。教科書のようにすべての地域を余さず網羅していったら、覚えることが多すぎて、実にしんどい。では、どうするか。
 あらゆる方向から見るのではなく、「1つの方向=ユニヴァーサル」から見ていけば、世界史はシンプルになる。自ら世界史になろうとしている歴史、外へ外へとどんどん出て行く覇権の歴史。そうした「ユニヴァーサル・ヒストリー(一方向の歴史)」を軸に歴史の流れを見ていけば、すっきりわかる。
 アレクサンドロスから冷戦の終結まで、三世界の約2500年の歴史ストーリーを描き出す。教科書では学べない「ユニヴァーサル・ヒストリー」という新視点。
 直木賞作家で西洋歴史小説の第一人者が満を持して放つ、はじめての世界史講義。世界史を貫く“1つの流れ"が見えてくる!                          (紹介文より)


 これは語り下ろし、になるのかな。佐藤さん独自の目線で切り取った世界史。佐藤さん、ラテン語読めたんや…。いや、読めるだろうとは思ってましたけど。
 面白かったです。この知識、自分も持てたら楽しいだろうなぁ、と何度も思ってしまった。読んだ端から忘れて行くもんなぁ;;
 序文にある、色々な角度からの世界史紹介から楽しかった。気候変動、DNA(アメリカ先住民にヴァイキングとは!)、経済史は『狼と香辛料』がこの側面から切り取りましたよね。
 目から鱗の知識も沢山ありました。ナポリの語源がネオポリスだとか、アレキサンドロスの周囲が学友で固まってたとか。当時の公用語ギリシア語で、「キリスト」の呼称自体がギリシア語だったとか。律法を守ろうとしたら余裕のある者しか順守できない、つまりは富裕層しか救われない、ってのは「…成程…!」でした。キリスト教の教えも、こう解説されると「日本でも仏教で似たような流れあったよなぁ」と思ったし。
 ムハンマドも当初迫害されて、生計手段が略奪だった、というのも初めて知りました。連日イスラム国がTVで取り上げられていた頃も、こういう切り口でムハンマドの生涯を、イスラム軍の広がり方を紹介していたのは、私は見たことありませんでした。
 十字軍、モンゴル・ショックの後大航海時代、航海の拠点として点やで線でしかなかった植民地が、産業革命を経て面での支配になる。中国の姿勢が、かつては朝貢が主流で鷹揚なものだった、ってのは、多分田中芳樹さんが好きだった中国時代のことですよね。私のイメージ、中国史って何か惨忍な描写が多い気はするんですけど、それは宮廷内の派閥争い的なことなのかな。対外的には違ったのかな。
 改めてみると、ローマ帝国って現在のローマよりかなり離れてるよなぁ、と思ったり。地理の知識もどうしてもいるんですよね、あちこちの地方名や半島名が出て来ても、「…そこどこ??」ってぴんと来なくて(苦笑;)。色々教えて貰えて楽しかったです。でもまたすぐ忘れちゃうんだろうなぁ;;