読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

真夜中のパン屋さん 午前5時の朝告鳥 大沼紀子著 ポプラ文庫 2017年

 シリーズ最終巻。

 5年後。
 班目裕也は綾乃と結婚して、今や一児の父。娘の百葉子の垣間見える自分のDNAに少々怯える日々。
 多賀田はシンガポールで佳乃と暮している。もうすぐ結婚するだろう、何しろ佳乃は身重だから。
 マタニティブルーを起こしているという佳乃を慰めに、斑目一家は日本を旅立った。幸せに慣れない班目は、多賀田の不安にも共感できる節がある。

 ソフィアと安田は、くっついたり別れたりを繰り返している。でも今度の別れは決定的っぽい、何しろ安田の両親が絡んでいて、ソフィアもその両親が言う「人並みの幸せ」というフレーズには弱い。カミングアウトの後、妙に良好な関係に収まった母親の希望で、ソフィアはハワイのキラウェア火山を訪れる。お店の仲間も、反抗期真っ只中のこだまも一緒に。

 柳弘基はブランジェリークレバヤシを辞めて、今はパリにいる。親の借金の肩代わりをして、もっと高収入な職場に身売りしたのだ。その代わり、退職の際には「希実と付き合う」関係をもぎ取って来た。
 何故か美作孝太郎も転がり込んできて、弘基の日常は慌ただしい。食事していたレストランが強盗に襲われる程に。

 母の死は希実にとって、思った以上にこたえていたものだったらしい。志望校に現役合格して、友達もできて、なのに家から出られない引きこもり状態に陥り、結果留年までしてしまった。暮林や柳、みんなのおかげで何とか復活し、最終学年を迎えた冬。語学留学として、希実はブロンクスへ来ていた。自分の本当の父親が誰か、何となく察しがついてしまったから。

 いなくなった弘基の代わりに、今では暮林がパンを焼いている。華やかさはないが、素朴なパン。手伝ってくれている美作医師に、美和子との関係を語る。…


 へぇ、希実と弘基と付き合うんだ、へええ――!と素直に驚いた後日談。幸せに踏み出せない面々が、でもやっぱりその一歩を踏み出していく過程が描かれます。こんなに上手く行くもんかな、とちょっと捻くれたくもなりますが(苦笑;)。
 一歩踏み出すために背中を押す、その連鎖を暮林さんたちは続けていくんでしょうね、無意識に。